命のナマエ

□(32)
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私は一向に帰ってこないハレンを探しに出かけていた。


(何故、戻らない?

何かあったのだろうか…。)


あの時の言葉を聞く限り、
彼女は遠くに行こうとしている雰囲気ではなかった。

ならば、戻ろうとした矢先に、
トラブルに巻き込まれた線を考えるべきか?



「レゴラスッ!」


そんなことを考えていると、
後ろから名前を呼ばれた。

振り向くと、ギムリが立っていて、
私は急いで彼の元に近寄った。



「見つかってよかった、
あんたに伝えたい事があってな。」


ギムリはずいぶん慌てた様子だった。


「帰ってこないフロドを心配して、
小さい人たちが飛び出してしまったんだ。

追いかけていたんだが、
見失ってしまってな…。

彼らはこっちに来てないか?」



「いいや、見ていないよ。

まずい事になったね。

私もハレンを探しているけど、
一向に見つからないし…。

近くにはいないのかもしれない。」


フロドだけじゃなくホビット全員までも、
居場所が分からない現状。


ふいに嫌な予感がすると思った。

だけどその正体が何なのか、
今の自分には、分からなかった。



「そりゃ、大変だ!」とギムリが驚いた。

そして続けざまに呟いた彼の言葉に、
私は耳を疑うことになる。



「ボロミアは帰ってきたぞ。

てっきりハレンも一緒だと思ったんだがなぁ…。」



そういえば、と思い出したのは、
アラゴルンの提案で、皆で今後の進路について話し合っている時のことだった。

フロドとハレンが離れたあと、
残された私たちは旅を続けるのかどうか、
続けるならば、どんな進路を選ぶかを語り合っていた。


ボロミアは当然、ゴンドール行きを譲らなかった。

そして、誰にも行き先を告げることなく、
会議を抜け出して、いつの間にか忽然といなくなってしまったのだ。



「ボロミアは、何か言ってたかい?」



「ハレンのことを、か?

いいや、そこまで聞いとらん。
ホビットが消えた方向へ追いかけるのが先で…。」



どうやら親友は、ボロミアが姿を消していた間のことも聞き及んでないようだ。



「もしかしたら、彼女もホビットも一緒にいるかもしれない。

…急ごう。」



そう、言葉にしたけれど確信はなかった。


彼女のことはおそらく、
ボロミアが知っているような気がしたが、
戻って確かめる時間さえも惜しかった。


なにしろ、ここ最近…敵の動きがおかしい。


早く見つけ出さないとと、
私はギムリと共に足早に歩みを進めたのだった。






32 chase-追跡-
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