命のナマエ

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「……。」


気づけば、ハレンは布団に包まれて横になっていた。

いつの間にタランに戻ってきたのだろうか?

昨夜、レゴラスとマルローンの樹に登り、
自分のことを話したことは覚えているが、
それ以降の記憶がまったくなかった。


あたしの横にあるレゴラスの布団は、きちんと畳まれていた。

タランには何故か誰も居ない。
いつも出歩くイメージの少ないギムリやボロミアでさえ、いなかった。


静けさのみが支配する中、
ハレンは少しだけほっとした気持ちだった。


正直、レゴラスとどう顔を合わせていいか分からない。


少し戸惑っている自分がいた。


率直な彼の思いに、胸が震えた。


あんな感情は、一度も味わったことがない。


それぐらい彼の言葉が嬉しく、宝物のように、
今でも心の中で輝きを放っている。


それはまさしく、
ハレンもレゴラスを好きだと思っている証のように思えた。


“好き…”


その感情が芽生えていたことを、

ハレンは本当は知っていたのだ。



認めるのが怖かっただけで、

触れるのが怖かっただけで、

ずっと見ないふりをしていた恋心は、

知らず知らずに、心の奥底で育っていた。



彼は、今、何処にいるんだろう?


ふと不思議に思う。



少しだけ軽く身なりを整えた後、

タランを出ることにした。



それとは別に、ずっと気になっていた事がある。


聖なる光の使者についてだ。


未だ、この力の反動と代償を理解できてない。

実際にルインロリアンに会ったことのあるガラドリエルならば、
あたしが知らない情報も知っているかもしれない。

知って何が出来るかわからないけれど、

この力とどう向き合うかを、

ハレンはもう一度、改めて考えようと思った。



(ガラドリエル様に会おう。)



心はすでに決まっていた。


たとえ、この命が関わろうと、

力を使うことに代償があろうとも、


大切なものから目を背けたくなかった。



(…守るために、此処に来たのだから…。)



ハレンは心の秘めた思いを抱え、ゆっくりと歩き出していた。
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