命のナマエ

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彼女が困惑したまま、抱きしめられてるその状況を理解しながらも、
腕の力をゆるめる気持ちにはならなかった。


矛盾している自分自身に、レゴラスも困惑していた。



危険な旅に行かせたくない。


――彼女が傷つくのが嫌だった。


彼女が手の届かない場所に行ってしまいそうで、怖い。


――もし彼女が裂け谷に留まれば、いづれにせよ離れ離れになるのに。



「ええと、あたしが行くって言ったの怒ってる?」


ハレンは突然の状況に戸惑いつつも、問いかける。


「怒っていないよ。」


「じゃあ…どうしたの?」


ゆっくりと腕を下ろして、私は彼女を解放する。




「私は君が行くという事が嫌なんだ。
でも『嫌だった』と言った方が正しいかな。」




――私には、君を引き止めるような資格はないのに。


呆れるほど身勝手な感情に、
レゴラスはそれほど強く彼女に惹かれていることを自覚した。




「君は女性だし、わざわざ危険な場所に行く必要もない。
それに、もしもの事だってある。」


彼女に理由を問われて、
出てきたのはもうすでに過去の感情だった。


君がそれでも行きたいと率直に告げるのを聞いて、
揺らいでいたはずのレゴラスの意思もゆっくりと固まっていくのだった。



――君を隣で守ろう。



私がこの弓にかけて、そう誓う。
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