命のナマエ

□(15)
2ページ/7ページ


ハレンに一言かけて、その場を後にしたアラゴルンは、
さきほど見回りから帰ってきたレゴラスの表情に気づいて、口を開いた。



「レゴラス、機嫌が悪いな。」


「そうでもないよ。」


レゴラスの表情はいつになく真剣で、笑顔はなかった。


もちろんいつ敵に襲われるか分からない状況というのもあるが、
このエルフはたとえ戦場であろうと余裕の笑みを浮かべるだろう。


それが今は、いつになく厳しい気がする。


彼の見つめる視線の先には、やはり一人の少女の姿があった。




「そうか?てっきり俺はハレンのことだと思ったんだが。」


こういえばさすがのエルフも白状するものと思っていたが、
いつもとはちがう予想外の反応が返ってきた。



「何故?」


さらりと告げたレゴラスに、感情はない。


・・・まさか、機嫌が悪いどころの話じゃないのか?



「ハレンはすいぶん、仲間に馴染んでいるからな。
少し前まで、ガンダルフとお前以外の親しい者がいなかったのに。」


しばらく迷った結果、
聞くにはあまりに確信に近い気がして恐ろしいので、安泰な道を選ぶことにした。



こうしている間にもハレンは、ホビットたちと楽しそうに笑いあっている。
彼女はこの旅で、仲間とずいぶん打ち解けているようだ。



「…ハレンは他人と距離を保とうとする所はあるけど、拒絶してるわけじゃない。

一度知れば仲良くなるのは分かっていたことだよ。」



そう言い切った以上、
変わり者のエルフがハレンについて語ることはなかった。


あれほど毎日、目に余るほど関わっていたのはレゴラスだというのに、
今は傍観するのみで、話しかけることすらしない。




…どんな心境の変化があったんだ?とか、何かあったのか?とか、
言いたいことは様々だったが、いつに無く無口なレゴラスに問えるはずもない。



アラゴルンが迷った末、
口を開こうとするよりも早く、ガンダルフが出発の合図を告げた。


レゴラスは行こうとそれを促し、結局会話は打ち切られる事となった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ