命のナマエ

□(14)
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旅立ちの日、あたしは泣かなかった。


裂け谷に居た思い出の日を想いつつ、

ここまで来た道のりを振り返った。


遠ざかるエルロンド卿の館をずっと見つめる事は出来ないけれど…



あたしはもう、知っている。




―――歩き出さなければいけない事と、



―――本当は、歩き出せることを。





14 advance-前進-




裂け谷の会議が終わってからというもの、
めまぐるしい日々の連続だった。


レゴラスには弓矢を、
アラゴルンには剣の指導をあおぎ、毎日訓練と実践に明け暮れた。


そのため、以前のような勉強時間は少なくなってしまったけれど、
ホビットたちと関わる機会も増えたり、アルウェンとも友達になることも出来た。


慣れない剣を扱うのは重く、持つだけでも精一杯なのだが、
実践あるのみ!のアラゴルンがさほど手加減をするはずもない。

いつもみっちりと鍛えられるので、ケガも絶える事がないのだ。


それをいつも心配するのが、アルウェンの役目で、
会うたびに「また傷を増やしたのね?」と怒られるのが日課だった。



なかば押しきられるようにして消毒をされ、
処置をおえる頃には、すっかり機嫌を直すところがいかにも彼女らしい。


「女の子がこんな傷を作って…。気を付けなきゃ駄目よ。」


そう言っては、
困った顔をして許してくれるのだから、親友はいいものだなと思う。
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