命のナマエ
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食事を終えた後、一同はそのまま広間へと向かった。
あたしもレゴラスの後ろに付いていき、部屋へと入る。
彫刻を施した2つの柱に囲われるように、
大きな暖炉がある『火の間』は、
エルフたちが歌を奏でる場所として愛用されている。
といっても、
宴会などがない普段の時は静かなもので、
考え事をするような人がたまに訪れるくらいだ。
あたしもレゴラスに連れられ、一度来たことがあったのだが、
温かな暖炉の火とエルフたちの歌声に、すぐに眠りへと誘われてしまった。
ここは、暖炉の火だけがずっと灯されている。
その明かりは、まるで永遠だと言われているかのように。
あたしはそのオレンジ色の炎を見つめながら、きゅっと彼の裾を掴んだ。
レゴラスがそれに気づいたかは分からない。
やがて、どこからか歌声が聞こえてきた。
――今日も、星は瞬くのだ。
美しい旋律にそっと耳を澄ます。
エルフが遠い帰るべき場所、アマンを尊ぶ詩。
レゴラスに教えてもらった最初のエルフの歌だ。
あたしに帰るべき場所はあっても、帰る所は無い。
ならば此処にいる以外、他に何処に行けというのだろう。