命のナマエ

□(12)
3ページ/8ページ


食事を終えた後、一同はそのまま広間へと向かった。
あたしもレゴラスの後ろに付いていき、部屋へと入る。


彫刻を施した2つの柱に囲われるように、
大きな暖炉がある『火の間』は、
エルフたちが歌を奏でる場所として愛用されている。

といっても、
宴会などがない普段の時は静かなもので、
考え事をするような人がたまに訪れるくらいだ。


あたしもレゴラスに連れられ、一度来たことがあったのだが、
温かな暖炉の火とエルフたちの歌声に、すぐに眠りへと誘われてしまった。



ここは、暖炉の火だけがずっと灯されている。


その明かりは、まるで永遠だと言われているかのように。




あたしはそのオレンジ色の炎を見つめながら、きゅっと彼の裾を掴んだ。


レゴラスがそれに気づいたかは分からない。


やがて、どこからか歌声が聞こえてきた。




――今日も、星は瞬くのだ。



美しい旋律にそっと耳を澄ます。



エルフが遠い帰るべき場所、アマンを尊ぶ詩。
レゴラスに教えてもらった最初のエルフの歌だ。



あたしに帰るべき場所はあっても、帰る所は無い。


ならば此処にいる以外、他に何処に行けというのだろう。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ