命のナマエ
□(10)
3ページ/7ページ
挨拶をすませ、いざ出発。
レゴラスの後に続き、馬をゆっくり進行させる。
遠ざかる森の王国と、その王の姿。
「…ハレン。」
思わず歩みが止まった時、
レゴラスが振り返り、あたしを見つめた。
少しだけ、心配そうな瞳で。
「…うん、」
大丈夫とは、ちょっと紡げないけど。
泣いてないよ。
悲しいわけじゃないから。
「…いつか、また来れるといいな…」
楽しい思い出の詰まった場所。
再び訪れたら、懐かしいと思える場所。
まるで、故郷のような…―――。
「うん、また来ればいいよ。
私がいつだって案内するしね。」
「…うん。」
レゴラスがにこりと笑って言う。
その言葉にあたしは小さく頷いた。
一行は裂け谷へ向かう。
安全で全く不安もない快適なエルフの旅。
それを続けること数日間。
ついに待ち望んでいた再会が訪れる。
もう一人の最愛の人、ガンダルフはすでに裂け谷に滞在しており、
弟子の遅い到着を待ちわびていたのである。