命のナマエ
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だから、この気持ちはそれは秘密にして、
そっと自分の中にしまっておこう。
代わりに、精一杯の気持ちを言葉に表して。
「どうか、覚えておいてください。
あたしにとって、
スランドゥイル様は…最愛の人です。」
そう言うと、
彼は一瞬真顔になってから、珍しく笑い出した。
「…フッ、くくっ…。」
「もう。あたし、真剣にお話してるんですよ。」
少しだけふてくされて、顔を膨らませる。
「…いや、嬉しいことに違いない。
特に君のような娘に言われるなら、なおさらの事だ。
もちろん『最愛』とは恋心の事ではなかろう?
だが、今の言葉は少し男に勘違いをさせる。」
スランドゥイルは妙にニヤニヤしながら告げた。
口ぶりとしては、彼女の思いを正しく捉えているようだ。
だがその意味をちゃんと理解しておきながら、
何故わざわざ確認するのか、彼女には分からなかった。
「勘違いしましたか?」
不思議そうに疑問を投げかける少女。
「…いいや、そなたの思いは確かに受け取った。」
それに対し、スランドゥイルはちらりと遠めにいる自分の息子を見つめた。
そして楽しそうに、そして満足げに頷いたのだった。