螺旋短編
□グッバイ、チルドレン!
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私たちは今日、最後の子供の日を迎えることになる。
カノンも私も大人になった瞬間から、自己を失い殺戮を繰り返す悪魔に成り果てるのだろう。
世の中は流暢にわが子の成長を祝っているというのに、
私たちはそんな愚かで罪深い事を考えなければならない。
しかし、それが私たち、ブレードチルドレンの運命(さだめ)なのだ。
「子供の日なんて馬鹿馬鹿しい。」
リモコンでテレビの電源を消し放り投げては、私はソファにうつ伏した。
カノンは苦笑してながら、紅茶を運んで、丁寧にテーブルに置く。
内心では彼も複雑なのかもしれない、だっていつか自分が運命に勝てるなんて言い切れるはずがないから。
心の中ではどこか、怖くて、恐ろしくて、寂しい。
自分が自分でなくなって、
大切な誰かを何の迷いもなく傷つける。
それがどう今までの報いであっても、私たちが生まれてきた事に罪はないのに。
紅茶の温かい温度と、やさしい香りが鼻腔をくすぐって、少しだけ私の気持ちを穏やかにさせる。
「ねぇ、私たちはいつまでこのままでいられるのかな?」
向かい合わせに座った彼を見つめて、問いかける。
「早いのは僕か君か…どちらにしろ、どちらかのスイッチが入ったらだろうね。」
冷静な瞳にいつもの笑顔はない。
「大人になんてなれなくていいのに。
ブレードチルドレンじゃなかったら、よかったのに。」
握り締めたのは既に血に濡れた手のひら。
「そうだね、」
彼女の掌に彼のそれが重なる。
それは少なくともひどく純粋で悲しく優しい願いだったから。
「だけど、僕はこの世界から消える運命でも、
いつまでも君といることを望むよ」
グッバイ、チルドレン
(さよならをしよう、君と世界と、明日に、)