螺旋短編
□バレンタインの午後
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○おまけ○
「あっ、そうだ。」
再び、名無しさんが鞄から何かを取り出す。
長い長方形の箱、これには見覚えがある。
アイズはふと嫌な予感がした。
「はい、プレゼントWWW」
それ以外にも思う節がある、
何故なら名無しさんの顔はものすごくご満悦だからだ。
先ほどの笑みとさほど変わりないのに、何故か喜べない。
「きっとアイズに似合うと思ったの。」
アイズはその一言で固まり、思考が止まった。
自分の予感が的中したのだ。
―――たどり着く答えは…
メイド服か!?
それともウエディングドレスか!?
(※その両方とも、プレゼント済です(笑)
バッ!
箱から取り出された服が、視界の目の前で広げられた。
「可愛いでしょ?
このヒラヒラのエプロンっっっwWW」
アイズは彼女の意味不明な行動に頭を抱える他ない。
「ハイ、コレもどうぞw」
ダテ眼鏡とネコ耳まで渡され、途方にくれた。
このオプションはもうこの際どうだっていいが…問題はこのエプロン。
アイズはそれをじっくり見つめる。
白い水玉模様の生地に、たっぷりのフリル。
思いっきり乙女チックなエプロンである。
「名無しさん、
お前はいったい何がしたいんだ。」
「私、ホワイトデー待ってるからねっ!
一緒にこれを着て、チョコ作ろうね。」
お揃いなのと楽しそうに言う名無しさんだったが、何故俺もなんだと問いたい。
いや、そうした所で返答は決まっている。
私がアイズのエプロン姿が見たかったの!
すごく似合うよっww
アイズが恋人で嬉しいな(照)
ああ見えて、天然な魔性を持ち合わせている。
そして一瞬でもひるんだと思えば、
その隙に着替えさせられてしまうのだろう。
「心配しなくても大丈夫。
チョコレートの作り方もちゃんと教えてあげるから。」
彼女はにっこり笑って満足げだ。
「…そういう問題じゃない。」
アイズの嘆きは名無しさんに届かないまま、
バレンタインは終了した。
結局、彼の元には無理やり押付けられたエプロンが残された。
“こんな日も悪くない・・”
「前言撤回だ。」
彼がそう思ったのは言うまでもない。