螺旋短編

□無音と微糖
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――後日談



「…アイズ、あの日は本当に何にもなかったの?」



「何がだ?」


「妙にいつもより言葉にしてくれたじゃない。

だから、なんかあったのかと思ったんだけど。」



少しだけ黙り込んで。



「何も……ない。」



「やっぱり、何かあったんでしょう?」



「いや、気にするな。

ただ、たまには言葉にするほうが不安にならないと聞いたからだ。」



「(やっぱり…)誰に言われたの?」



「カノンと理緒にちょっとな。」


「ああ、なるほど。

…私も嬉しかったからよかったけど。」



「今度、計画してた旅行に行こう。」


「いいの!?
でも確か、ハードスケジュールだったんじゃ…。」


「一番面倒なのは楽曲提供だけだ。
曲はすぐ出来上がるから問題ない。」


「じゃあ、すぐに皆に連絡しよーと。」


「…二人じゃないのか?」


「あれ、理緒やカノンに会った時、
そういう予定だって聞いてなかった?」



「……。」


無言の目線。



「…ごめん、えっと…。」


「それとは別に、二人で出かける場所も決めておけ。」



アイズは去り際にそう言って、ピアノに向かって楽曲を作り始める。



「うん!」



遠かった彼の背中がまた近くなったような気がした。
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