螺旋短編

□今こそ愛の誓いを
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たのしい朝食は終わり、
片付けをし終えた歩がテーブルに戻ってきた。

テレビの電源をいれニュースが流れると、おきたばかりの頭でも朝だと認識する。

今日は日曜日なので、
3人そろってゆったりとした時間を過ごせる。
たわいもないことや、テレビの内容を話題に会話をする。

そんな当たり前のことが、幸せそのものに思えた。

ニュースキャスターが「今日はバレンタインですね」などと話をすると、
しだいに私たちの話はバレンタインの話題にうつった。

話を持ち出したのは、火澄だ。


「そや、今日この日を俺は待ち望んでいたんや。
きっと郵便受けに本命チョコがはいとるんや!」


「いや本命どころか、
郵便受けには新聞と広告しか入ってなかったぞ。」


歩が冷静に言うと、
火澄はずどーんと音が響くような感じで落ち込んでいた。

その二人のやり取りがおもしろく、私は笑ってしまった。


「まぁまぁ、火澄。
私はちゃんと用意してるよ。」


そういうと彼は思い切り嬉しそうに目を輝かせ、「ほんまか!?」と問う。

私は「ちょっと待っててね」と告げてから席を立ち、
部屋に行って用意したチョコを持ってきた。

「はい、どうぞっ」


火澄には赤の袋。
歩にはピンクの袋でラッピングされているチョコレートを渡した。


「いつもの感謝の気持ちを込めて作ったの。」


「手作りなん!?」

「そうだよ。」


二人とも嬉しそうだ。


「「ありがとう、名無しさん」」


「どういたしまして」


よかった、二人が喜んでくれて。


「開けてもいいか?」


歩が聞く。

私は少し焦りながら、二人を制止した。


だって二つとも
同じように見えて、実は違うから。


「あの…、
ここで開けれられると恥ずかしいから
だから、部屋で食べて欲しいな…。」


恥ずかしさで最後の方は消え入りそうな声になってしまったが、
二人は部屋で食べることを約束してくれた。

なんだか、どきどきしてきた。
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