螺旋短編
□今こそ愛の誓いを
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大好きな彼に喜んでもらいたくて、
作ったチョコレートは甘くて苦い恋の味がした
朝、起きると、
るんるんと気分のよさそうな火澄の姿と、
いつものようにフライパンを片手に料理を作る歩の姿があった。
キッチン越しにあるテーブルの席に火澄はもう座っていて、
ミルクをたっぷり入れたコーヒーを飲んでいた。
キッチンの方をちらりと見ると、
料理はほとんど出来ているようなので、あたしも席についたのだった。
「おはよう、火澄」
あいさつをすると、彼はにっこりと笑い返してくれる。
「おはよう、名無しさん」
彼は楽しそうに、歩が今作った朝食について話し始めた。
「今日は目玉焼きにジュージーな厚切りベーコンが2枚ついとるんや！
毎日カロリーとか野菜食べろとかうるさい歩が珍しいやろ。」
「うるさいは、余計だ。」
その時ちょうど歩が、
出来たての料理を運んできて、
持っていた片方の皿を火澄の頭にコツンと乗せた。
「お、うまそうや。」
嬉しそうな火澄の声。
そして、頭上からは柔らかい歩の声がした。
「おはよう。名無しさん。」
「おはよう。」
柔らかくて穏やかな笑みを向けられた。
料理が盛り付けてある皿を差し出される。。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
おいしそうな匂いが鼻腔をくすぐり、お腹がすいたなと思った。
「あ、そうだ。
今トーストが焼けるから、
冷蔵庫にあるヨーグルトとジャムを用意してくれないか？」
すたすたと歩はキッチンに戻っていく、
その際にこちらを振り向いて声をかけた。
歩はまだ料理を運び出してくるのに忙しいらしく、一手が足りないようだ。
「じゃあ、私が･･･」
「俺がやるから、ええよ。
名無しさんは座ってゆっくりしとり。」
私が立ち上がると、
火澄はすぐさまキッチンに駆けてゆき、先に越されてしまった。
なんだか嬉しいような、はがゆいようなそんな気分だった。