螺旋短編

□生きて知って叫んで
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――あたしはいつも歩に守られていた


あたしは知っている。
歩は照れ屋なだけで、本当はとても優しい。


あたしにとって、
歩は不思議な存在だった。

唯一心が許せる人物で、あたしの心のより所だった。

歩は結構世話好きなことろがあって、思いやりがある。
傍にいると安心できた。

そんな時、
あたしがブレードチルドレンだとばれてしまった。

歩を騙していたつもりはない、
けれど結果的にそうなってしまった。

歩はあたしを避けて、お互いに言葉を交わさない日々が続いた。

その時の歩は、つらかったのだと思う。

でも今はこうして隣にいてくれて、本当に嬉しい。



「歩…」


あたしの体のあちこちから、
血はだらだらと流れ続けてる。

ズキズキと響くような強い痛みと共に、地面に赤色の水溜りをつくっていった。

歩は何度もあたしの名前を呼んでいる、叫んでいる。

それがひどく幸せだった。

あまりに嬉しくて伝えると、
「馬鹿なこと言うな!」と涙を流しながら、大声で怒鳴られた。

そんな彼を見て、器用だなぁとのんきに思ったし、
怒られたら怒られたで、懐かしくて嬉しかった。

彼は悲しげに顔を歪ませている。
それを見て初めて、歩が悲しいと思っている事を知った。

悲しい…。

あたしだって、本当は悲しい。
怖いんだよ。

すごく、寂しいんだよ。


あたしは最後にお礼を言った、
ありったけの思いを言葉に乗せて。

もう、時間はないから。



「何も言うな。
すぐに助けが来るから。」


こんな時も彼は優しい。

まだ生きていたかった…

その思いは、胸の中にしまっておこう。


「…生きてね」


あたしは祈った、
神様なんて信じてないけど、最期くらい良いでしょう?

あなたが幸せな人生を送れますように。


「笑うなよ。諦めるな…。」


苦しそうな表情、まるで自分自身に、言い聞かせているように見えた。

…今日は貴方の笑顔を見れそうにないね。

ああ、また歩の微笑が見たいな。



「歩…」


「…名無しさんっ!!」


「ありが…とう…」



最後の最後まで、笑い続けた。
あたしが幸せだったこと、
貴方に思い出してほしいから。

熱いものが、こみあげた。


ありがとう、さようなら。

貴方に会えて私は幸せだった



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