螺旋短編

□生きて知って叫んで
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生きて知って叫んで
命の重みを

生きて知って叫んで
生きることの苦しみと喜びを

生きて知って叫んで


愛の大きさと、

奪うことの罪深さを。



――俺はいつもあいつに守られていた


あいつは笑って不器用な俺に優しく接してくれた。

俺にとってあいつは不思議な存在だった。
唯一心が許せる人物で、頼りにもなった。

あいつは優しい、
雰囲気がとても穏やかで、そばにいると自然に安心できた。

そんなあいつが、
ブレードチルドレンの仲間だと知って、俺は動揺した。


あいつを信じられなくて、突き放した。
俺はずっとあいつに裏切られたと思っていたんだ…。


「歩…」


彼女のあちこちから、血がだらだらと流れている。
それは降り止んだ雨と混じって、
赤色の水溜りが広がっている。


俺は何度も、あいつの名を呼んだ。


…なんでだ。

どうして…、こうなったんだ!


「あたしは幸せだったよ」


笑う彼女。


「ありがとう、歩…」



何、勝手にいってるんだ。

まるで別れの言葉みたいじゃないか。



俺がどんな言葉を言っても、
彼女は必死に笑おうするだけで。

俺の言葉なんて、聞きもしない。
もう死を覚悟しているみたいに…。


「今度は普通の、女の子がいいなぁ…
。歩と普通に会いたいな…。」


もう何も言うなよ。

すぐに助けてやるから。

そう言いながらも、
なかなか救急車はやってこない。

いや、来たとしても、もう…。


「生きてね」



…笑うなよ。嬉しくない。

あんたが傍にいてくれなきゃ、
その笑顔も意味がないんだよ…。


「歩…」


「…名無しさんっ!!」


「ありが…とう…」


彼女は最後の最後で、涙を流した。
綺麗な笑顔に、ひとすじの涙が伝っている。


逝くな。

お願いだ。

どこにも行かないでくれ。



生きて知って叫んで
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