螺旋短編

□メランコリー!メランコリー!
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季節は移り変わる、
そして新しい年を迎え、新しい節目を迎える。

――5月。
なにも判らぬまま忙しく過ぎ去ってしまった前月と異なり、
少しずつ物事に慣れ余裕が出て来る時期。

しかしその反対、
ふと精神的にも肉体的にもほっとした分疲れてしまい、憂鬱な気分になる。


人は5月病というらしい。
でもわたしはそんな生半可なものじゃないと思う。

だって、四六時中貴方と離れているなんて今までなかったし、
どんなに慣れたといっても、心から付き合える人なんていない。

新生活は新しくて新鮮なものだけど、何もかも新品過ぎて妙に窮屈だ。

部屋には一人私だけで、
夜に帰ると部屋の明かりは付かず、真っ暗。

ふいに切なさを誘った。


ねぇ歩、
貴方は今、何をしてる?


メールを送るには簡素な内容で、
電話の割には短すぎる、単純で素朴な疑問。

わかってるよ、
彼が元気だって事は。

でもね、わたしは不安なのです。
ひとりの白い病室の中で彼が何を考えてるのか…が。



「ねぇ、歩?」


それでもどうしても、我侭でも、
声が聞きたくて、


『どうしたんだ?』


電話をかけた。
そんな理由(わけ)、貴方は知らなくていいから。



「ねぇ、これからも電話してもいい?」


『当たり前だろ。』


今がこんなにも嬉しいから。

だからね、
今だけはどうかメランコリー、
忘れさせて。

貴方の声だけを聞いていたい、
この孤独と憂鬱が鳴り止むまで。



『心配しなくても、俺はいつだってお前の味方だ。』



メランコリーと君とわたし

(わたしもいつだって貴方の味方でいよう。)



0512

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