螺旋短編

□いつまでも
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「へぇ、手作り?」

「いや、まずいから!」


カノンはわたしの手作りチョコを箱から取り出し、(しかも笑顔で!)
一粒を人差し指と親指ではさんで眺めていた。


「・・わたしの料理の下手さは殺人的なの・・・っ!
知ってるでしょ!?」

幼馴染に鳴海歩という高校生主夫がいるのだが、
彼に以前『救いようのない下手さだな』とある意味感心されたくらいだ!

(まったく自慢にならない!)


この料理音痴には自分でも諦めているけれど。

この日ほど料理が・・・
せめてお菓子作りくらいうまくなりたい!と心から思う時はない。

「やっぱり去年のようにお店で買った方が・・・」

涙目になりながら嘆くと、
彼はそれは駄目だよと言った。


「僕は名無しさんの手作りチョコが食べたかったんだから。」


あまりに嬉しそうに笑うものだから、何もいえない。

でも正直、本当は嬉しかった。


ただし、作ったものが美味しければ…。


「って駄目だって!」


カノンはわたしがとめるのも聞かず、口にハート型のチョコレートを運ぶ。

…ああ、ついに飲み込んでしまった。

愕然としている私に、
カノンは何事もなかったように、おいしいと言ってくれる。


「お腹こわすよ、死んじゃうよ!」

「大袈裟だよ。」

・・・絶対まずいと思うのに・・・。

「それより、一番大事な言葉を聞いてないんだけどな。」


わたしの髪をさわりながら、カノンが柔らかい笑みを浮かべた。

ソファーに座っているわたし達の距離は自然に縮まり、
お互いが見つめ合っている。


「・・・大好きだよ、カノン。」


少しは恥ずかしくて、視線を落とすと、カノンが笑った。


「愛してる。」

「僕も。愛してる。」


彼はわたしを抱き寄せて、ありがとうと掬った髪にキスを落とした。


わたしこそ、ありがとう。


いつまでも
永遠に貴方と!!


心からのありがとうを君にのせて、愛を捧げよう。



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