螺旋短編
□テーブル越しに
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昼間、終わりの見えない大掃除をしていた名無しさんは、
メールの着信音に気づき、ポケットからケータイを取り出した。
画面をみれば、一通のメール。
友人の「ひよの」からのメールと想定していたのに予想外だ。
“鳴海 歩”
まさか愛しい彼からメールが来るなんて、心が躍った。
内容を見ると、いかにも歩らしかった。
顔がほころんでしまうのも仕方ない。
もちろん歩が料理上手な事も、その絶品さも、
健康への配慮も知っているが。
一人暮らしの私を心配してというそれだけの理由にしては、
いかにもイベントらしいものだし、
きっと彼も意識していたのだという想像がより気持ち高ぶらせた。
なんせ恋人の同士であるわたし達だが、
それらしいデート的な要素はまだあまり無い。
彼の家にお邪魔したり、
お弁当を一緒に食べたりはするのだが…。
この前話した時に「歩の年越しそば、食べたいなぁ」といった言葉を覚えていたのだろうか。
少し気恥ずかしいが、
新しい年を二人で祝えるなんて、嬉しかった。