螺旋短編
□タイムリミットまであと数十秒。
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『僕はハンターになる。』
そう告げると、君は「もう無理だよ」と小さく嘆いた。
電話越しだから、表情は見えなかったけれど、
本当は泣きそうなくらい苦しかったのだと思う。
『一緒にハンターになろう、名無しさん。』
その言葉は彼女にとっては残酷で哀しすぎた。
望まない事は百も承知で。
それでも、君をこの手で、この掌で葬るなんて。
いくら呪いから救うのだとしても、
命を奪うという残酷な手段は、
愛しているからこそ出来そうで、それとは対比して、怖くて認めらなかった。
故郷のイギリスで、最後のクリスマスをともに過ごす事を約束した。
来年、僕はイギリスを出る。
ハンターとしてみんなの元から離れていく決意をしたから。
朝10時ごろ、きっと熟睡しているはずの君に電話をいれた。
時間と場所を指定して「待っているから」と一言添えて、電話を切った。
返事はなかった。
いや、きっと返事を待ったとしても
彼女は黙ったままだったろうけど。
「カノン・・・」
彼女は時間より、少し遅れて待ち合わせ場所に訪れた。
髪は少し乱れて、息も上がっていた。
彼女の髪に触れて、直してやる。
そんなごく単純で、ちいさな事が懐かしく、切なかった。
「行こう。」
紳士らしく差しのべたその手に、彼女はたどたどしく重ねた。