螺旋短編

□タイムリミットまであと数十秒。
2ページ/5ページ



『僕はハンターになる。』


そう告げると、君は「もう無理だよ」と小さく嘆いた。
電話越しだから、表情は見えなかったけれど、
本当は泣きそうなくらい苦しかったのだと思う。



『一緒にハンターになろう、名無しさん。』



その言葉は彼女にとっては残酷で哀しすぎた。

望まない事は百も承知で。

それでも、君をこの手で、この掌で葬るなんて。
いくら呪いから救うのだとしても、
命を奪うという残酷な手段は、
愛しているからこそ出来そうで、それとは対比して、怖くて認めらなかった。



故郷のイギリスで、最後のクリスマスをともに過ごす事を約束した。

来年、僕はイギリスを出る。
ハンターとしてみんなの元から離れていく決意をしたから。

朝10時ごろ、きっと熟睡しているはずの君に電話をいれた。

時間と場所を指定して「待っているから」と一言添えて、電話を切った。

返事はなかった。

いや、きっと返事を待ったとしても
彼女は黙ったままだったろうけど。





「カノン・・・」


彼女は時間より、少し遅れて待ち合わせ場所に訪れた。


髪は少し乱れて、息も上がっていた。
彼女の髪に触れて、直してやる。

そんなごく単純で、ちいさな事が懐かしく、切なかった。


「行こう。」


紳士らしく差しのべたその手に、彼女はたどたどしく重ねた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ