魔法

□ハロウィンと薬学教授
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おまけ


「そういえば、今日、薔薇の花束が扉の前においてあったの。」


キスを交わしていた二人だったが、
彼女の言葉で、意外な悪戯の真相を知ることになる。


「てっきりセブルスだと思ってたんだけど、よく考えたら違ってたみたいね。
貴方なら、短いメッセージくらいつけるもの。」


「ちょっと待て。何?」


若干自己完結で終わっている話題を、あえて聞き返す。

「(自室の前に薔薇の花があっただと?)」

嫉妬深い彼からすれば、聞き捨てならないのは当然だった。


「いや、だからね。
送り主は不明だけど、お菓子にまぎれてあの花が贈られてきたの。

それでセブルスかと早とちりして、
私も貴方をびっくりさせようと思って悪戯を…。」


なるほどとセブルスは納得した。

普段はつけるメッセージカードも、
あえて嗜好を変えて、演出のためにつけなかったのだと思ったのだろう。

以前、薔薇の花束をプレゼントしたこともあり、
その事からも勘違いしてしまうのは道理だった。



「その薔薇はもうないのか?」


やや彼女の体を引きよせながら、
冷静な言葉とは裏腹に、執着心を露にするセブルス。

そんな態度も、彼女は好きだと思う。



「部屋に数本は飾ったわよ。残りはさっきの悪戯に使っちゃったけれど。」


どうせ我輩の恋人のことだ。
以前、薔薇を送った際も数本は飾り、
残りは香水やら、入浴剤やらハーブティーなどにしてしまうのが落ちなのだ。

だが、
そんな事も知らぬ送り主は、
最愛の人への悪戯という愛情表現に使われるなど思っていなかっただろうに。


「フッ…哀れだな。」


小さく呟きながら、セブルスは心の中ではいい気味だと毒づく。




「しかし、我が恋人に生意気なまねを仕掛ける輩には、
少々思い知らせなくてはなりませんな。」


「またそんな事言って…。
生徒に本気になることないでしょう?」


「生徒とはいえ、相手も立派な男ですからな。
これは正当な行為といえよう。」


彼女も仕方ないわね…と困り果てながらも、
心配してくれる恋人のことが愛おしく感じているのだから。


「ほどほどにしなさいよ。
…私はどこにも行かないんだから。」


「ふむ、考慮いたすとしよう。」


と同時に二人の間に、笑いが零れだす。


些細なことでは揺るがぬ二人の絆が、
和やかなムードを作り出していた。

セブルスが杖を降ると、
いつの間にか、薔薇の花びらが降り注ぐ。

賑わしいハロウィーンの喧騒を余所に、
甘く情熱的な世界が二人をいつまでも包み込んでいた。



――next..?―-


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