命のナマエ

□(9)
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森の王国に滞在して数日後。


エルフの暮らしや此処での生活は何となしに分かってきたものの、
あたしが此処でする事はあまりなかった。


皆、昼間は馬を引き連れてオーク狩りに出かけていることが多いし、
夜はスランドゥイル様主催の宴会で盛り上がっているか、森や自然を詠った歌に耽っている。


これといって、人間のあたしが入り込めるものは無い。


せっかく暇しているのだからと思って、
厨房に顔を出してみたり、女中に声を掛けたが
簡単な雑用もさせてはもらえない。


(毎回「ゆっくりしてくださいね」とか、
「お客様ですから」とか、やんわり断られてしまうのだ。)



こうなってはゆっくりする以外、他なかった。



あくびをかみ締めながら、むくりと身体を起こす。


ピチピチと小鳥のさえずりが聞こえてくる、心地よい朝だった。


あたしはあらかじめ用意されていたエルフの服に着替えて、身なりを整える。



そろそろレゴラスが部屋を訪ね、朝食に誘ってくるだろう。



そう思った矢先、コンコンと丁寧なノックが聞こえた。



「どうぞ。」



あたしは梳いていた櫛をテーブルに置いた後、ゆっくりとドアを開けた。


「おはよう、ハレン。」


そこには当然、いつものようにさわやかな微笑を浮かべた彼がそこに佇んでいた。




09 affection
-慈愛-
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