命のナマエ

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スランドゥイルは自分の仕事を片付けるべく、足早に帰っていった。
レゴラスはあたしと残り、一緒にロッセを探す。
といってもケガをしている私は歩けないので、彼の馬に乗せてもらっている。


「ハレン、君は何故ここにいたの?」


レゴラスが不思議に思うのも当然だった。
あたしは闇の森をひとりで彷徨っていた。

人間がエルフの地に来ることも珍しいが、
娘がひとりで、こんな危ない場所に来るのも変な話だ。


エルフならガンダルフのことは誰でも知っている。

そういえば、何かあった時はガンダルフの名前を出すよう言われてたっけ。



「あたしはついこの前まで、ガンダルフと旅を共にしてたんです。
といっても、途中で保護されたんだけど。」


ごそごそと自分の荷物を探る。


不思議そうに見ているレゴラスだったが、
あたしが取り出したあるものを見ると驚きの表所に変わった。



「じゃあ、それはミスランディアの…。」


「ええ。」


それは別れ際に渡された彼の帽子。


「・・・ナズグルが」


「なんだって?」


彼は困惑した表情であたしを見つめる。


「ナズグルが、私たちを襲ってきて…、
ガンダルフはあたしを先に行かせました。」


恐ろしき幽鬼たち。

元は人間だったはずのもの。


彼らの目的は指輪と、あたし。


「夢中で逃げて、どこを走ってきたかも記憶になくて・・・結果此処にたどり着きました。」


あの時は絶対絶命だった。

ガンダルフはあたしを守りながら戦わなきゃいけなかったし、幽鬼は2人だったから。

追い詰められたけれど、その時は助けられた。



銀の狼に。



「そうだったんだね。
ごめん、辛い話をさせて。」


レゴラスは少しばかりすまなそうな顔をしている。


「ううん。」


辛くはない。

あたしが辛いのはガンダルフに迷惑を掛けていることだから。

今、彼はどうしているのだろう。


「じゃあ、君はミスランディアに会いにいくんだね?」


「裂け谷に行けば、会えると思います。
そう約束しました。」


「ハレン、それなら、僕らと一緒にいかない?」
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