命のナマエ

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あたしは沈み行く中、瞼を上げた
深い青に光が揺れていた――





06 course
-進路-




あれ、此処はどこ?



真っ白な空間にあたしはいた
周りには何もない

そこは懐かしい感覚だった、あたしは此処にきたことがある



「また会ったわね、ハレン。」



声がするほうを振り向くと、其処には青い髪の女性がひとり立っていた。



「貴方は、ルインロリアン…」


「そう、それが私の名前。覚えててくれたのね。」


彼女はふわりと微笑んだ。


風もないのに、彼女の長い髪はふわっと揺れた。
彼女が着ているのは白い衣、
それは時折きらきらと虹色に輝き美しい。

彼女はあたしと同じ力を持っている。

聖なる光の使者は大きな力を持っているゆえにそれを悪用されぬよう何度も生まれ変わり、闇の力から逃げてきたのだと言う。

彼女は一番最初の聖なる光の使者。
つまり、あたしの魂の記憶だと彼女は教えてくれた。


2年前、彼女に初めて会って、自分の存在を知った。


あたしは元の世界に帰りたくて助けを求めたけど、
闇が濃くなってからは会う事さえ難しくなってしまったし、
あたしの意識も曖昧なっていたから、どうにか出来たものじゃなかった。


もう2年も月日が流れてしまえば、状況は完全に手遅れだった。


助けを求めた所で帰る場所など無い。



「…あたしは死んだの?」


彼女は首を横に振った。


「いいえ」


彼女がそう答えるのなら、そうなのだろう。
あたしは結局まだ生きている。



「そう」



短い返事、その言葉に関心はなかった。
ただ、そういう事実というだけ。




「貴方は私と同じね、結局その運命から逃れられずにいる。」



ルインロリアンは寂しげに遠くを見た。
その運命がどんなものだったか聞いたことは無い。

生まれ変わり続けた理由も、その力を持っている意味も。


あたしは自分を知りたいと思いながらも、
知ることが怖くて、いつも逃げてばかりだ。



「それが運命(さだめ)なの?」


「そうね、そうかもしれない」



伏せた瞳には悲しみの色、
言葉の余韻はやはり暗いものだった。

それが運命だと言われれば、割り切れることもある。

でも、心は簡単にはいかない。

様々な感情が押し寄せて、あたしの中をかき乱す。



「でも私がしてあげられることはある。
だから、生きて。」


彼女はあたしを真っ直ぐ見た。
光のある瞳で強く訴えられる。



「・・・・・」



何故、生きなくてはならないの?


そんな瞳で見つめられたら、言えなくなるじゃない。



「…貴方には幸せになる権利がある、
最後くらいは笑って幸せだったと言ってその命を終えて欲しい。」



「そんなのっ…!」



できっこない……


ぐっと言いたい気持ちを押し込めたけど、心の中は深い疑念に包まれている。


それでも、いつも批判できないのは何故?

いつも自分の人生を、命を捨てきれないのは何故?



「出来るわ、貴方ならきっと」



そう言われてすぐに意識が遠くなる。
彼女の姿が視界から消えていった。






気がついたら、真っ白な空間は青空と太陽に変わっていて、
あたしは水びたしの状態で湖の真横の地面に横たわっていた。



まぶしい光



帰ってきてしまった、この世界に――



頬に流れているのが涙なのか水なのかも分からないその顔を両手で覆った。




「そんなの…貴方のエゴじゃないっ・・・」




けれども、そう言いながらも、心の中は溢れていた。


幸せになりたい、という気持ちで――
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