命のナマエ

□(4)
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世界を包むのは闇―・・


「灰色の魔法使い。貴方は来ちゃ、駄目」


微かに残る記憶の残像の中に


「わしを知っておるのか?」


灰色の老人を見た



「知っているよ、この世界に来るずっと前から・・・」



―――――――――――――――――





04 wake
-道-



(ここは、どこ・・?)



やわらかい布団の中に自分がいる。


部屋の左側にあるカーテンから柔らかい光も入って、夜目に慣れてしまった視界にはひどく眩しい。



「ここは、ローハンのエドラスじゃよ。」


灰蓮があたりをきょろきょろ見回していると、上から老人の優しい声色が降ってきた。

ゆっくりと体を起こし始める。
その老人は手伝ってくれたので、軽いお辞儀をして礼をのべる。



「もう体は大丈夫かのう?
痛むところがあったはしないか?」


彼はあたしの顔を覗き込み、親身になって心配してくれる。


ああ、かれは誰だったっけ。


声と雰囲気はなぜか懐かしいような気がするのに思い出せない。


記憶がひどくあいまいで混乱している。



「ゴホッゴホッ・・・ッッ」



返事を返そうと声を出そうとするも、漏れるのは吐息のみ。
声を搾り出そうとすると、苦しくて咳き込んでしまった。

彼が背中をさすってくれたので、少しは楽になった。

もう一度、声を出そうとすると今度は少しかすれた自分の声を耳にすることが出来た。



「貴方・・は?」


「・・わしは魔法使いじゃよ。
人はわしのことを灰色のガンダルフと呼ぶ。」


「・・ガンダル、フ・・さん?」


どこかで聞いたことがある言葉だと灰蓮は眉間にしわを寄せた。


その名、顔、服装、声、口調…
そのひとつひとつを順にたどり、それを自分の記憶に置き換える。



「貴方は私を、助けてくれた…」

「思い出したか。
そうじゃな、結果的にはそうなる。」


「ありがとうございました。」


「いいや、わしはたいしたことをしとらんよ。」



彼はそう笑って「そうそう」と思い出したように言った。



「ハレン、わしのことはガンダルフと呼べばよい。」


「私の名前・・・」


「ああ、知っておる。
ハレンカツラギ、お前さんが教えてくれた。
そして、わしのことをそう呼んでおったよ。」


「分かりました、ガンダルフとお呼びします。」


「そうしとくれ。」


ガンダルフはゆっくりベッドの横に置かれている椅子に腰掛けた。
そして、あたしの表情を見ながら、記憶の状況を確認するようにゆっくりと語りだした。



「さて、お主を捕まえていたサルマンを覚えておるな?」


「はい…」


「わしはとある件で、助言を求めるため彼の元を訪ねたのだが、すでに間に合わなかった。

サルマンは魔法使いとしての道を踏み外しておった。

ゆえにわしも捕まっておったが、鷲のグワイヒアが友人の情報を伝えにきた所を何とか運び出してもらえたのじゃ。」


「…そのグワイヒアさんは?」


「もう、行ってしまったよ。
彼は本来、乗り物ではない、今頃此処より遙か彼方の空を自由に飛び回っていることじゃろう。」


「そうですか。」
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