命のナマエ

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わらわが彼女に出会ったのは、

すでに永遠の命を手放して、聖霊と呼べぬ者になった後でした。


そんな彼女を匿うことにしたのは、偶然のような出来事だったのです。



その後、ルインロリアンと名乗った彼女は、
指輪を作り出しました。

聖なる光の使者が輪廻を繰り返しても、
自らの運命を思い出すように、その責務と重荷を忘れぬように…。

その指輪は戒めとしての意味を持ち、

目印として、
使者の居場所をイシルが認識するという目的もあったようです。


その指輪は、彼女の死後、
イシルに託され、何度もその転生を彼を見守ったそうです。


時折、彼はロリアンを訪れました。

ルリンロリアンを知っているのはわらわと彼くらいでしたから。



そんなある日、
わらわはあれ以来、初めて生まれ変わりを目にしたのです。


エルフの子供。


けれど、親に捨てられたのでしょう。



わらわはその子を運命だと思い、育てました。

素性は明かしませんでしたが、
彼女は紛れもなく、ロリアンのエルフだったのです。

ハルディアを兄と慕い、仲のよいエルフたちも大勢いました。

けれど彼女は成人してすぐに森に出て以来、
永遠に帰ってはこなったのです。






彼女はオークに殺されて、命を終えていました。


それを不幸と呼ぶべきなのか、

わらわには今でも分かりません。



彼女は自分の力を知ることもなく、
正体にも気づくことなく、ロリアンのエルフとして命を終えることが出来たのですから。


けれど、ハルディアの傷は大きかったことでしょう。
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