銀魂
□らぶれす
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「いってらっしゃい。」
手を振ると彼はああ、と云ってその場を去っていった。
藍色の着物を翻した彼の穏やかな横顔を、
私はいつものように見送った。
その記憶が走馬灯のようによみがえり、頭の中をよぎった。
彼は知っているのだろうか。
私の気持ちがあの頃と変わり始めていることを。
そこに立っているのは、昔とは違う、私。
彼はそれを知りつつも、知らないフリをして、いつもと同じように微笑んでいるに違いない。
そして私はそれを感じつつも、
自分の居場所が欲しいばかりに、あの人に依存し続けているのだ。
それを愚かと呼べど、どうしようもなく、
自分はこの場所にすがっている。
「小太郎・・・」
すでに其処にいない、彼を思い浮かべ、そっと問いかけてみた。
幻想の彼は振り向いてくれる、その長く綺麗な髪を翻して、不思議そうに聞くのだろう。
『何故、泣く?』
「さよなら、小太郎・・・」
小さくつぶやくと、彼も同じようにつらそうに顔をゆがませた。
もうさよならだね
心と、思い出が壊れるオトがした。
現実を見つめて、私はひとり泣いた。
(ああ。もう一度愛せるなら、そうであって欲しかった。)