小さな本棚3

□かの憧れにさよならを
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あれ以来、何度も雲雀と会話をしようと試みた。

なぜそうまでして関わろうとしたのか、その理由としては、俺の変な子供の意地と興味が出たからだった。
同い年(かどうかは定かではない)が同じクラスにいることが普通に嬉しかったし、
チームワークを基本にした実践授業で何人もの年上を相手にしても、微動だにしないその心(シン)の強さに俺は惹かれた。

チームワークなんて気にせず、かなりの個人プレーをして先生に怒られてはいたが、それでもやはりその強さはすごかった。
荒々しい個人プレーでも、そつなく完璧にこなしたその動きには無駄がまるでなかったのだ。
気高くて、まるで孤高のライオンのようだと思った。

今まで一位を独占してきた俺と並ぶ存在も初めてで、俺はとにかく雲雀恭弥という少年に勝手ながらも親近感を抱いている。
交わした言葉といえば未だに、
「いやだ」「咬み殺すよ」もしくは無視なのだが、最近は「好きにすれば」と言ってくれるようになっていた。
これは多分、少しは他人以上にはなれたと思ってもいい…はず。
雲雀のことだから諦めているような気がするが、それでもいやだったらいやだと言う人間だ、あいつは。

そう言ってくれるようになった頃にはもう卒業試験が迫ってきていて、テスト内容は分身の術だった。
当然、俺も雲雀も合格した。

だが、その日を境目に雲雀と会わなくなったどころか、見かけることすらなくなった。
下忍説明会の時にもいなければ、木ノ葉のどこを歩いても見当たらない。
彼はいったいどこへ行ったのか。
周りに聞いてみようにも、雲雀の交友関係を知らないという問題以前に、交友なんてものを雲雀は持ってすらいなかった。

そうこうしている内に、俺の中で雲雀は憧れというものに変わり、
その憧れを糧にして中忍試験に合格し、更には暗部入隊にまで上り詰めた。
上り詰めて、上り詰めた先には雲雀がいた。

相変わらずの雰囲気で、相変わらずの態度で、鳥の面を手に、そこにいたのだ。



「雲雀……?」



あの時のようにゆったりとした動きでこちらを振り向いた雲雀は、僅かだが顔付きが変わっていた。

子供だし、成長期なのだから当たり前なのだが、でもやはり、あの独特の雰囲気はそのまま雲雀を取り囲んでいた。
雲雀はすぅと目を細めると、あぁ…と声を漏らした。



「うちはイタチ、か………。ふぅん…、暗部になったんだ」



興味深そうに僅かに笑む雲雀。
俺は目を見開かせるばかりだった。



「なぜ雲雀が……。お前、今まで何をしてたんだ…?全く見かけなくなって心配したんだぞ……」


「あ、そ。君には関係ない。……と言いたいところだけど、僕は今機嫌がいい。だから答えてあげるよ。
……僕は、卒業試験に合格してすぐに暗部に入ったんだ」


「すぐ!?まさか…。下忍になってすぐ暗部になれるわけがない……」


「普通はなれないんじゃが……。雲雀は特例でな…」



火影様が座るイスがくるりと回ったと思ったら、そこには三代目火影様がいた。
呆れたような、疲れたような重いため息をつく三代目火影様。
俺はどういうことだと火影様を見た。



「卒業試験が終わってすぐじゃった。いきなり雲雀が来たかと思えば、暗部に入れろと言ってきおってなぁ…。
なぜか理由を聞けば、下忍はスリーマンセルで任務をするこのやり方が気にくわない、だから暗部に入れろと抜かしおった」


「群れて任務をするだなんて考えられない。しかも草食動物とだなんて……」



咬み殺したくなるね、と心底嫌そうに顔をしかめさせる雲雀。
相変わらず、群れ嫌いは健在だった。



「……もちろん断ったのじゃが、引かんくてのぅ…。
暗部総隊長と戦い、負けたら引く、勝ったら暗部総隊長にすると取引をしてな……」


「……雲雀が…勝ったんですか?」


「……うむ」


「なかなかよかったけど、それだけだったよ」



ふあ、と欠伸をしながら言いのたまった雲雀に、なんて滅茶苦茶な人なんだと唖然とする。

アカデミー生上がりの下忍に……暗部総隊長が負けた…?
確かに雲雀は、今までの授業で手加減している節はあったが、まさかここまでとは……。







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