小さな本棚3

□かの憧れにさよならを
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=イタチ視点=





進級して新しくなったクラスには、他の者たちとは雰囲気がまるで違う、
一際異彩を放つ変わった男の子が教室の窓際の一番後ろに座っていた。

入ってすぐそっちに目がいったのは、いつもの特等席に既に人が座っていたからで、
それだけなら大して俺も気にはしなかったのだが、そんな変わった雰囲気を纏う同い年らしい男の子を、俺は今まで見たことがなかった。
ついこの間飛び級をして周りが年上ばかりの中、同い年くらいの男の子がいれば普通目につくし、
何よりこれだけ目立つのに気付かなかったのは、今までこのクラスにはいなかったからだろう。

ならば彼はいったいなんだ?
俺と同じく、飛び級でもしたのだろうか。

そう考えるも、答えはやはり出ないわけで。

……いつまでもここに立っていても仕方ないな。
卒業まで残り少ないが、これも何かの縁だろうし、話しかけてみようか。

そう思ってその男の子に近付く俺に、周りにいる生徒たちはなぜかぎょっとした目で俺を見てきて不思議に思ったが、
今更歩みを止めて理由を聞きに行くのも何かが阻まれる。
頬付きをつきながら窓の外を見続ける男の子の隣に立つ。



「隣、いいか?」



ゆったりと、気だるそうにこちらを向いた男の子の目は雰囲気に似合った鋭いもので、男の子はしばらく俺を見た後、鼻を鳴らした。
バカにしたものではなく、興味がないと言わんばかりの鳴らし方だった。
ふいとまた視線が窓の外に移されて、男の子はただ一言。



「いやだ」



ここでそう断る奴はなかなかいない。
後で友達が来るからと断るのなら分かるが、まさかいやだと言われるとは思ってもみなかった。
思わず思考が停止して、俺は結局、先生が来る二分後までそこに立ち尽くしていた。

これが俺、うちはイタチと雲雀恭弥のファーストコンタクトだった。



(後に、年上のクラスメートから聞いた話によれば)
(なんでも、彼、雲雀恭弥は他人との馴れ合いを好まないかなりの危険人物で、気に入らない人間は“咬み殺す”らしい)
(それは確かに)
(雰囲気が他とは違うわけだ)




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