「…何、この状況。」


「何って、デートっすよ。」






鹿SUNDAY
       切原






春の穏やかな昼下がり。

空を見上げれば
建物の間を小鳥達が飛び回り、
街路樹達は風を受けさわさわと踊る。
そして、空気は澄んだ草原の様d…




「…っぶぇっくしょいぃい!!」


「うわ、汚っ」




花粉だ。
鼻水ズビズビ。
人生そんなに甘くないのだ。

今日は日曜日。
休む日と書いて、休日だ。

普段学校でストレスを溜めている私は、この休日で全てを吐き出す。
そしてリフレッシュするのd…




「っぶぇっくしょいぃやぁ!!」


「ぶっ…何スか今の、しょいやって」




人生はそんなに甘くないのだ。


甘くないと言えば、
隣を歩くこいつ。

  切原赤也

もちろん、本名である。


何故か私の後を付いてくる
いわばストーカーである。

顔も名前も知っている、が。
赤の他人である。

私の通う学校では、それなりに有名な後輩らしいが…
残念ながら、全くもって興味は無い。

故に、会った事も無ければ話した事も無い。

そんな彼が、今隣を歩いている。
私と同じ歩幅で。

ストーカーとしか言い様が無いでしょ。




「…何、この状況」


「何って、デートっすよ」




デジャヴだ。

かれこれ30分程、
このやり取りが続いている。




「…後輩くん、私の休日を邪魔しないでくれないかな?」


「邪魔なわけないっしょ!デートなんスから。」




こいつ、思ったより重症だ。

埒があかないので
逃げてみよう。




「ちょっ!!逃げないでくださいよっ!!」




左手、ギュっ。
いや、ギュリっ。




「痛い、馬鹿。」


「アンタが逃げるからでしょ」


「だからって本気で握るこたぁねぇでしょ、あんちゃん」


「変な日本語使うのやめて下さいよ。」




手をぱっと離すと、
何故かブスッと拗ねた。

子供か、お前は。
めんどくさっ。

でも…機嫌悪い人は、どうも苦手。
取りあえず理由だけでも。




「…後輩くん?」


「……何スか。」


「…何故拗ねる。」


「……拗ねてないっス。」


「拗ねてるじゃん!」


「……」


「…はぁ…あのさ。」


「……」


「理由教えて貰わないと、私が悪くても謝れないんだけど?」


「……」


「…わかった、もういいよ。」




苦笑して、立ち去ろうとする。




「待てよ。」




右手、ぎゅっ。
今度は、ぎゅっ。

少し驚いて、振り向く。


ちゅ。





















ちゅ

















「アンタが俺を好きになった方が早いっしょ?…アンタ鈍いから。」










にやり。


そして、去る。

ストーカー兼、後輩。












鹿SUNDAY

   ―始まりの日曜日である











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