過去の拍手小話

□9月2日〜12月4日
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【お月見】

ドアを開けたらやたら大きなススキの穂が目に入った。
その穂から顔を出したのは可愛い笑顔の俺の彼女。

笑顔は100万ボルト?いやそれ以上!

「どうしたの?ススキなんて持ってきて」
「お月見だから?」
「お月見?」
「そうだよ。みんなハロウィンって言うけど、日本人ならお月見だよね?」
得意げな顔でそう言いながら俺の部屋に入り辺りを見回す。
窓際に立つと・・

「うん、ここだね!」って言って小さなテーブルを引っ張ってくる。

「ねぇ何してるの?」
部屋に入ってきていきなりの行動にさすがの俺もついていけなくて・・

「お月見飾り・・」
彼女は小さな小瓶にススキを生けて、お皿の上に小さな丸い団子を重ねて置く。

出来上がった飾りを前に、彼女は満足げに腕を組んで見ている。

「本格的だね・・」
「窓を開けてね、ここに座って」
俺は彼女の指図通り言われた場所に座った。

「あっ、すごいね!」
ススキの穂のちょうど斜め上にまん丸の満月があって・・うん!すごい!

「でしょ?」
って俺の顔の横に自分の顔を寄せて・・
どうやら目線を同じにして確認してるらしい・・・

俺はさっと顔を彼女に向けて、その頬にキスをした。

「あっ・・」
真っ赤な顔で驚いた彼女の手を引っ張った。
そしてひざの上に座らせる・・

「お月見しよう・・こうやって・・」
「あのね・・」
何か言いたげな彼女の口に団子をひとつ・・

俺のひざの間は、小さな彼女がすっぽりと納まる。。ここはおまえの指定席・・っていうか・・おまえ専用・・・

俺に寄りかかり、月を見るその顔を・・俺は月よりも見ていた・・

月見より・・おまえを見ていたいから。

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