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□Rain Rhapsody
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Rain Rhapsody

Rain Rhapsody、
どうか力を貸しておくれ。

悲しめない人に、悲しむことを教えたいから。

―――雨が冷たく降り注ぐ。
ザアアァァァ、と消えいく残響の余韻を残していく雨音に
耳を傾けつつ、山本は鞄を片手に川原を歩く。
生憎のどしゃぶりのせいで、本日野球部はなし。
ツナたちと一緒に帰ろうとしたのだが、
ツナは補習、獄寺はそれをずっと待ってる、という結果のため
今日は珍しく、山本1人で帰ることとなった。
普段ならツナと喋り、
相手にされずふてくされた獄寺が自分につっかかってくるという
下校の時間なのだが、その2人がいないためか
雨音が慰めてくれているように聞こえる。
リング争奪戦の時、自分は「雨の守護者」となった。
その雨繋がりかは知らないが、
ふとした瞬間に雨は心を癒してくれる存在となっている。
その雨を眺めていたくて、雨音をずっと聞きたくて、
山本はぶらぶらと川原を歩いている。
雨のせいで遠くが見えない並盛の様子を眺めつつ、
川に掛かる橋を眺めればいつもより人通りが少なく、
こんな天気に出歩く人などいないと思わず苦笑いする。

―――その時、視界に黒が入った。

・・・前言撤回、出歩いてはなくても
雨に濡れようとする奇人変人はいた。
傘も差さず、川原の砂利や石を踏みつけて、
その腕に何かを抱いている、
「ひばりー?」
雲雀恭弥、その人がいた。
雨が撥ねてズボンの裾が濡れることも構わず、山本は駆け出していた。
「・・・ああ、君か。」
川をずっと見つめていたらしい雲雀は、
山本の声というより足音が振り向いたようだ。
刹那に、濡れているカオが、泣いているように見えた。
目の錯覚だと思いつつ、呆気にとられて黙っている山本を
いぶかしんだのか、雲雀は「ねぇ」と声をかける。
「こんな天気にどうしたの。
いくら君が雨の守護者とかいうヤツだからって。」
「いやいや、それいったら傘も差さず歩く雲雀もどうかと。」
「・・・見回りしてたんだよ。
急に降られて、最初は橋のしたで雨宿りしてたんだ。」
そんな雨宿り程度ではやむ雨ではない。
と直感的に感じた山本だが、言葉を紡ごうとする雲雀の口が
見えたため、それを言うのはやめた。
「ネコが、いたんだ。黒猫。」
「へ?」
じゃ、抱えてるのはその黒猫、と言おうとしたが。
その腕から、血が滴り落ちていた。
「ッ、あんた!?」
「僕のじゃない。」
腕をイヤイヤながらに広げた雲雀の腕の中には、
黒猫が―――すでに息絶えてはいるが、いた。
「飛び出して、間に合わなかった。」
いつもより言葉が少なく、何を言おうとしているのかは
飛び出る単語のおかげでどうにかわかった。
毛並みの汚れ具合から、おそらく車に撥ねられたのだろう。
雲雀を見つけたか何かを見つけたかは知らないが、
この黒猫は濡れたアスファルトの上を駆け、
同じように走る車に轢かれた。
それが、およその見当である。
「ねぇ、君だったら泣く?」
唐突にかけられた言葉に、山本は
「泣くんじゃねーの?」
と答えた。
「手の伸ばせる距離にあるのに、守れなかったら。きっと後悔する。
あの時は仕方なかった、なんて思わない。」
続けられた言葉に雲雀はそう、と目を伏せた。
「君やあの草食動物、跳ね馬とかだったら、泣くんだろうね。」
「僕には、悲しみも分からない。」

ああ、だから泣いているように見えたんだ。

そ、と雲雀の頬に手を伸ばして触れる山本。
ああ、泣いてはない。
悲しみだけで、人は泣けないから。
「絶対に分かるよ、いつか。」
普段なら希望的観測だ、とそっけなく返す雲雀も
今日は大人しく、そうだねと頷いた。

「ひばり、あとでソイツ埋めてやろうぜ。」
「・・・そうだね。」

どうか、悲しみが分からない君に、悲しみを教えられるように。

Rain Rhapsody、力を貸して。

雨音が刻むメロディなら、どんな歌だって歌える。

君と悲しみを分かつ、優しい歌を。


終わり。




短くまとめられなかったーッ!!!
玉☆砕

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