novel
□月夜の再会
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「……すまぬ、もう大丈夫だ。」
高杉に支えられていた手を離してもらおうと、身を引こうとした瞬間、
その腕に肩を強く引き寄せられて、きつく抱きしめられる。
「………ヅラ、…会いたかった」
「…………」
相当腕に力を込められていて、苦しいくらいのはずなのに、桂は全然、嫌だと思わなかった。
ぴったり密着した着物越しの身体にほのかな熱が生まれ、全身を鈍く痺れさせる。
脚の痛みとは関係なく、眩暈に意識がくらむ。
「………俺も、…だ……」
無意識にこぼれ落ちた言葉。
それとともに、桂の手も高杉の背中に回される。
その言葉に反応したように、高杉が桂の白い耳を優しく噛んだ。
「………ん…」
ぞくり。
身体中が甘く疼いて。
思わず力が抜け、高杉にしがみつく。
それとほぼ同時に、壁に身体を抑え付けられる。
逃げられない。
首筋を、熱い舌先にねろりと舐め上げられて、身体が震える。
脚を割られて、情けなくも、すでに熱を持ち始めてしまっている身体の中心を、膝で軽く刺激されると、痺れるほどの熱が下半身からじわりとはい上がってくる。
「………ぁ…、っ…」
耐え切れず、桂はずるずると崩れ落ちた。
桂に合わせて、高杉も腰を下ろしていく。
意地悪な指先が、着物の内側に秘める桂の熱を見つけ、緩く撫で上げる。
「ッ、…!」
びくり。
情けないほど身体が跳ね上がる。
細い身体を包む桂の着物は、ゆるゆるだ。
着物越しでも、だいたいの肌の感触が伝わる。
撫で上げたその指先で、はっきり浮かび上がる桂の熱の形をぎゅうっと握り締めた。
「……あぁ、っ…!」
とろけそうになる灼熱に、瞳が潤む。
身体中が熱を帯びて、甘く疼いて…。
「……た、かすぎ…っ、…や、だ…」
口ではそういうものの、身体はどうしても恋い焦がれていた刺激に耐え兼ね、熱く染まってしまう。
まだ草履も履いたままで。
こんな、鍵もついていない玄関口で。
そういう焦りも確かにあるのに、
どうしても、やめてほしくない。
桂の熱を握った高杉の指先が、ゆっくりゆっくり動かされようとしている。
次の瞬間に襲うであろう甘い刺激に期待を込めたかのような吐息が、赤い唇から甘く溢れ出す。
つい何十秒か前まで、涼しい表情をしていたはずの、目の前の男。
そのすっかりとろけた表情を見遣り、高杉はふっと笑った。
「……なーんて、な…」
どこかいたずらっぽいつぶやきとともに、高杉の指先が、離れていく。
予想していた刺激が訪れず、桂の身体は焦れ、潤んだ瞳が高杉を見つめてくる。
「……てめぇ、足怪我してんだろ?消毒してやるよ」
そう言って、高杉はさっさと和室の方へと消えてしまった。
「………なんなのだ…」
桂は、ため息を吐いた。
あれほどまでに期待してしまった自分が、本当に情けない。
すっかりその気にされてしまった身体を巡る熱は、思うように消えてはくれない。
それでも、どうにか残る理性で、うずく身体を必死に押さえ込み、高杉を追って和室へ向かった。