隠の王

□どうしたの?
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今日の宵風は、なんか、変だ。


さっき、宿題が終わって、隣でいつもの様に俯いて膝を抱えて座っている宵風に話しかけたら、返事が返ってこなかった。

いくら待っても、返事がない。
反応すらない。

寝ちゃったのかな?って、暫く名前を呼びながら体育座りで、待ってみたけど、やっぱり反応がない。

ぴくりとも動かない宵風に、やっぱり寝てるのかなって思って、夕飯の支度をしている雪見さんの手伝いでもしようと、立ち上がった。

立ち上がった途端、片腕を引っ張られ、そのまま倒れ込んでしまった。

と、思ったら、床の硬い感触はなくて、代わりに、ぽふっと、何かにぶつかった。

何か、じゃなくって、さっきまで何の反応も示さなかった、宵風だったみたい。

目の前が真っ黒だ。

「宵風?」

「……」

やっぱり返事が返ってこない。

返事の代わりに、ぎゅっ、と、抱きしめられた。

どうしたんだろう。

疑問だけが、頭に浮かぶ。

「宵風、宵風っ」

「………」

やっぱり駄目だ。ちっとも反応がない。

「宵風、どうしたの?」

「お腹痛いの?」

「お腹すいた?」

「ねぇ、宵風っ」

「どうしたの?」

何を言ってもだんまり。すっごく困る。

頑張って宵風の顔を覗き込んでみたけど、表情が見れない。

一先ず離してもらおうと、宵風の背中をてしてし叩いてみた。
頭もこつんと叩いてみる。

・・完敗。

どうしよう‥って、なんとなく宵風の頭を撫でながら、むぅっと、悩んでいると、少しだけ動きがあった。

「宵風、どうしたの?」

「ちゃんと聞くから、話してくれるかな?」

そっと抱きしめ返してみると、ちょっと間が経ってから、宵風の口が少し動いた。

「…るが」

「?、うん」

「壬晴が、宿題やってたから」

「うん」

「から、」

「うん」

「‥うん」

「…え?」

微妙なところで頷かれて話しが終わってしまった。
話してくれたのはいいんだけど、肝心なところを聞くことができなかった。

「オレが宿題やってたから、宵風、どうしたの?」

「…から、無視されたから、」

「無視?」

あれ?無視なんてしたっけな?と、小首を傾げてみる。
ああ、きっと、問題に集中しちゃってて、呼ばれたのに気が付かなかったんだ。

「宵風、オレが宿題やってた時、オレ、宵風の事、無視してた?」

「…(こくん)」

そうか。だから宵風もオレの事無視したんだ。

「ごめんね、宵風」

「…ごめん」

「え?」

ごめんなさいをしなきゃいけないのは、オレの方だよ?

すると、ずっと俯いていた顔が、すっと上がって、オレの目を見た。

すごく、悲しそうな目をしていて、オレも悲しくなった。

「だって、壬晴を無視…したから‥」

ごめんなさい。

「・・・宵風は、悪くない」

「でも無視・・した」

「でも宵風は悪くないんだよ?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

暫く沈黙が続く。

この続きに、何を話していいのか思いつかなくて。
抱きしめられたままの姿勢で。
かといって、しっかり抱きしめられてるから、離れることもできない。
オレは、オレの目をじっと見る宵風の目を見つめ返すことしかできなかった。

そして数分後、夕食の準備を終えた雪見さんが、見詰め合ったまま動かないオレ達を見て、今日で何度目かの眩暈に襲われたのは、言うまでもない。


++++++
何を書きたかったんだろう(汗。
雪見さんは苦労人。
二人のラブラブっぷりを見せ付けられてるといいよ(ぇ。

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