福音

□頭じゃわかってるんだけど体が言う事きかないの
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さあ、落ち着いて。
大丈夫、そんなに難しいことじゃない。
寝る前にシミュレーションしておこう。



まず、彼が登校して来る。
…いや、まず私が先に登校しておくんだった。そうだ其処からだ。
そして、学校に着いたら、窓を開けて、花瓶の水換えをして、机の整頓を済ませて、自分の席に着いて、何喰わぬ顔で読書。
そこに彼、カヲル君がやって来る。



「あ、おはようカヲル君。」

「おはよう、今朝は早いね。」

「うん、日直当番だったから。」

「あれ、今日の日直は僕だよ?」

「えっ、うそっ!ま、間違えちゃった…。」

「はは、そそっかしいね。」

「ごめんなさい…」

「何を謝ることがあるんだい?助かったよ。」

「そう…?」

「うん。お返しに…そうだな、次の君の当番の日には僕が代わるよ。」

「でも私の勘違いだったし…そんなの悪いよ、いいよ!」

「そういう訳にもいかないさ。」

「でも…」

「うーん、じゃあ君のお手伝いは?そのくらいはさせてくれないか?」

「う……分かった。」

「ありがとう。」

「私こそ!ありがとう!」

「ふふふ。」

「えへへ。」




なんてね!
なんてね!!
そんなに上手くいく訳無いけど(そもそも冷静に考えるとカヲル君はもう少し子どもっぽいぞ。)妄想くらいは自由だよね。
加えて、努力してみるくらいは自由だよね。
よしっ、此れにてシミュレーション終了!頭の中ではバッチリ完了!
明日は頑張るぞ!!





『頭じゃわかってるんだけど』





で、寝坊しました。





……え?嘘、全然間に合わないじゃん。いや、授業には間に合うけど。授業の十分前には着くけども。でも日直(偽)としては全く駄目じゃん。
ガッカリだ。
嗚呼、カヲル君の次の日直は何日後だっけ…。
肩を落としながら今日も学校へ行く。
カヲル君と仲良く2人で歩けるのは一体いつになることやら。



『頭じゃわかってるんだけど
体が言う事きかないの』







「…おはよーございますー…」
「ねえ、君さ、今日日直だったの知ってた?」
「えっ!私!?カヲル君じゃなかったの!?」
「順番変わったの、やっぱり知らなかったんだね。朝の仕事は僕が代わりにやっといてあげたよ。」
「ええっ、あ、ありがとう!!」
「いいよ。でもお礼に放課後デートしてね。」
「うんいいよ………って、え!?えっ、ええ!?」
「ふふ、約束だよ。」




(終)



110201
題:藤川さん

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