捧げ物

□Does she love you?
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Does she love you?

―I don't know. But I believe, about she gives her love to me.



好き、だなんて言うのは罪だと思う。俺が斬った数え切れない数の肉塊。俺は獣の血をかぶりすぎた。…汚らわしいんだ。

それじゃあ今触れている事と矛盾が生じないか?そうだよ、これは大きな矛盾。

今までは顔を見合わせても喧嘩しなかったら小さく拍手、見掛けたら心の中でそっと好きだと呟く。それで満足していたのに。

お前のせいだ、畜生。お前が無垢で可愛すぎるのが悪い。

順調に「オツキアイ」が始まった今もそれが鎖となって、俺から触る事が出来ない。

ほら、今日だってこんなに無防備なお前が俺の膝の上で腕を絡めている。

あ、こら、そんなにくっつくな!貴方の銀さんだって狼なんだからな、襲っちまうぞ!

なんて考えながらも何一つ行動出来ない恐がりな俺(キスすらした事が無い)。そんなにウブじゃあ居られないけれど、やっぱり尻込みする。今は身体に触れるだけで止めておこう。

時々、こいつを誰の目にも触れない場所に監禁したくなる。
でもそれは「夢」。「夢」は叶わないからこそ舌の上で転がして甘みを堪能できる。
捕まえてしまおうとする手を理性が繋ぎ止めるんだ。
だから、俺はその手を使ってあいつを抱きしめる。



膝の上のお妙はというと、さっきから目尻を染めて腕を絡めたり頬擦りをしたり。俺と目が合うと、この世の物とは思え無いくらい可愛らしく口角を上げる。

嬉しそうに細められている瞳。意外に長い睫毛。すっと通っている鼻。少し赤くなっている頬。つやつやで柔らかそうな唇。痕が綺麗に残りそうな白い肌。

鼻息が荒くなりそうなのを、抑えなくてはならない。

まだ相手は子供だ、そんな事望んでねェ、と頭の中で何度もリピートする。
ちょ、だからそんな顔で俺を見るな!今日は優しく出来る気がしないから無理………ッてそうじゃなくて!!





すると唐突に、下から抑えた笑い声がした。


「どうしたんだ?」



お妙は最初、頬を真っ赤に染めて深呼吸をしていたが、やがて吹き出し、耐え切れなくなったのか高い声で笑った。子供の様に無邪気な笑い声。





「……隠せてませんよ。」


くすり、と今度は艶っぽい微笑を浮かべて、人差し指を出す。
指は俺の顔をもどかしい程優しくなぞった。



この女は、全て分かってるんだ。俺の腹の底で膨らんでいる黒い欲望と、俺の心に溜まる意味を為さない紙屑。


「さらけ出しましょうよ。……全て。」



そう言い放った唇に自分の唇を強く押し当てた。
ずるい、ずるい。
何度言っても足りないくらい、こいつはずるいんだ。


「俺の心中、掻き乱しやがって。」


劣等感とか嫉妬とか性欲とか不安とか。
全部引っくるめて、俺を包み込んでくれる。そして、


「好きですから。」


俺が求めている言葉を与えてくれる。







俺はそんなお前にどうしようも無い程、焦がれてる。

「好き」という甘い言葉じゃ言い表せないけど、「愛してる」というには汚すぎる。

じゃあこの気持ちはなんというのか?





そんな疑問を持てた事が幸せだと思った。





「じゃあこっからはオトナの時間といきますか…」

「がっついたら格好悪いですよ?」

つまりがっつくなって事か。
それは無理な話だなァ。

だってお前は可愛すぎる。

生意気な事を言う口に噛み付けば、「オトナの時間」が始まった。



Does she love you?

―勿論俺達は愛して合ってる!
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