捧げ物

□三角恋々
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〔あ、うっ、はうっ…〕

寝てる時に聞こえた泣き声。
そのせいで寝られなくて結局夜中の3時に眠りに着いた。
勿論朝は寝坊。学校に遅刻しそう。

きっと羽入が泣いていたのだろう。今は学校に遅刻しないのが最優先だから、仕方ない、後で辛いものでも食べてあげようと梨花は考えながら、通学路をかけていった。

「はぁ、はぁ…。」

でも、数分走った後、立ち止まる。
やっぱり、駄目だわ。
この身体で走るのには体力が必要。なのに梨花の体力は寝不足のせいで落ちていて…走れない。

はぁ、と大きく息を吐いてから、勢いよく走り出そうとしたが足がもつれて駄目だった。

遅刻は決定…ね。

決定なら、と投げやりになって、ゆっくり歩き出す。心に余裕ができた所で羽入がいないことに気がついた。

羽入、と呼ぶ。でも来ない。…どこかで謝り続けてるのかしら。なんだか羽入に構うのが面倒になってきたので、重い身体を引きずってまた走り出した。





〔ぅ、あぅ…う、うぅ〕


頭に突然響いて来る声。昨日の泣き声と一緒だ。
でも昨日より鮮明に聞こえるため、頭がガンガンした。すぐ終わったからよかったけど。

羽入、いい加減にしなさいよ…

苛立ちを表すように地面を強く踏み歩いていたら、もう目の前は学校だった。



ブン、ブンと何かを振り回す音。
校庭で圭一が金属バットを素振りしているのがわかって、少し残念に思った。

昨日と何も変わっていない。

それから、悟史の時と一緒。
圭一も悟史と同じ様にいなくなるのはわかっていた。
でも、無駄に足掻こうとは思わない。
だって運命は変えられないから。
これは私がヨミガエリを幾度も繰り返して学習した事だった。

圭一をちらりと横目に見て、憐れだと思った。

「かわいそうな圭一」

心の声が出てしまい、慌てて口を噤んだ。

声が聞こえたのか圭一がこちらに振り向いて、

目が合った。

仕方ないので、お愛想でみぃ、と笑おうとした、その時。

〔は、うぅ…うっあっ〕

また泣き声が頭に響いた。
頭の中を反響する甲高い声が不快で無意識に顔を歪めた。

向こうが顔を背けたので、私も顔を背けて、学校の下駄箱へと歩きだした。
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