小説

□壊れた玩具
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銀八は土方の方に視線をむけた。

すると土方の顔がすぐ紅く染まり、目を逸らすように顔を教科書で隠す。







可愛い。

銀八はいつもそう思っていた。



ちらりと窺う目。
合わせたいようで合わせると恥ずかしくなり、ぷいと視線を逸らす。

ガキっぽいとは思うが、そのガキに惚れているのも事実だ。






だったのにね。






いつしか。
目の逸らし方が変わった。


俺を避けるように。
俺を見ないように。

所詮、無理のある恋なんだし。

なんて、思えなかった。

あいつが他の奴を見るのが許せ無くて。
他の奴があいつを見るのも許せ無くて。

いつでも諦められるように、予防線張っといたのに。
あんな張りのない線なんて、切れても当たり前だ。



諦めたくない。
諦められない。


あいつは俺の物だ。

そんな薄汚れた感情が俺を侵しはじめる。



久しぶりに言葉を交わした土方の声は掠れていて、俺に向けられるのは恐怖の感情だけだった。

誰がこんな奴に変えたんだ。
可愛かった土方を、恐怖しか拾えない玩具へと変えた奴は誰だ。




………誰なんだろうな。


銀八は土方に口づけしながら、考えていた。

怯える土方の身体に口づけをすると、土方は震えた。
快感でなく、恐怖で震えた。

「や、あっあっ、ぎんッぱッ…!あ、あ、ンッ…!」
身体は快感に正直だ。

快感を呼び戻せば、土方は帰ってくると思っていた。


のに。





終えた後の土方の言葉は痛かった。

「おまえなんざ、好きじゃねぇ。もう、近づいてくんな。」



嗚呼土方。







君を変えたのは






俺だ。








嗚呼土方君。








嗚呼…。








今は会うこともなくなった土方を思い出しては、胸が苦しくなる。



嗚呼俺のせいで





壊れた土方君。







照れ隠しで目を逸らされた頃を思い出した。






少し涙がでたりする、








八月の事。


END
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