小説
□甘い電流
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銀八は教室の戸に手を掛けた。
剣道部の顧問である銀八は、6時頃まで体育館に居なくてはならなかった。
面倒だと思うが、仕方ない。顧問なのだから。
面倒ごとも終わったためさっさと帰りたいと思ったのだが、そういえばテストの採点をしていない。
思い出さなきゃ良かったな、なんて呟いて廊下を歩いてきたのだった。
部活のあった生徒ももう、帰ってるだろうに、教室には明かりがついていた。
手を掛けたが、少し迷う。
このパターンはアレだ。中では決意した女子が「好きです」なんて恥ずかしい言葉を告げて、言われた男子が苦笑いってパターンだよ。
俺?俺の事はどーでもいいの。余計なこと言うなや。
俺が開けたら、「あ、先生」みたいなさ、いい所だったのに、みたいな?
痛いよね。そういう視線。
俺は手を掛けたまま、待つことにした。