小説

□先生
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「先生。少しいいですか。」
「なんだ?学級委員長が俺に用?銀さん、なんかやらかしたっけ?」

白衣を身に着けた銀髪は、突然の訪問者に驚いていた。

自分の所へ質問に来る生徒などこれまで居なかった。というよりまず、自分の事を気に掛ける人は滅多にいなかったから。
気に掛けてもそれは興味本位で、多分銀色の髪と赤い瞳への好奇心だろうし。そんなに重要ではない。

なら、なぜ驚いてるか。
それは彼女は自分の事を嫌っていたはずだからだ。

自分は変な事をやらかしてしまったのだろうか、としか低レベルな脳は思いつかなかった。

「今は生徒会長です。あと、先生は何もやらかしてません。心当たりでもあるんですか?」

少女はそんな銀髪の思考など知らずに、ふふ、と笑った。

「そんなに怯えないでください。別に嫌ったりしてませんから。」

怯えてる…俺が?
怯えているのは彼女の方だろう。なのに…頭、大丈夫か?
なんて。そんな事しか思いつかない自分の頭が大丈夫じゃなさそうだ。

しかしそれよりも。彼女の「嫌ったりしてませんから」という言葉に心が飛び跳ねた。

「別にィ…怯えてなんかねぇし。で、なんの用?」

心の動揺を知られないように、ぶっきらぼうに答えた。

そういえば彼女と話すのは久しぶりだ。
半年程、話していなかったのかもしれない。
それどころか目は逸らされていたし、殆ど避けられていたから、無理は無い。

しかし、そう思うとやっぱり嫌いなのではないか…と考えると銀八の心は沈んでいった。
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