小説

□sweetly
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「土方…」

薄く色付いた頬を指で撫でると、土方は眉を少し動かした。しかしまだ寝ている。

「土方…」

銀時は眠ってしまった愛する人の名を呼んでいた。
切なげな表情を浮かべて。

「…。」

しかし、いくら呼んでも夢から覚めない事がわかると、銀時は土方にそっとキスをした。

起こさないよう、そっと。

また土方はピクリと眉を動かしたが、その後は寝返りを打つだけだった。

大丈夫。きっと土方はオレを…。

不安で重くなった身体を引きずり布団からはい出る。

しばらくボーッとしてから顔を洗いに行こうと洗面所に向かった。




パシャリと跳ねる水音と共に顔に冷たい刺激が走る。

眠気を吹き飛ばす必殺兵器だ。

銀時はいつも水ごときに負けるものかと、目を覚まさぬようにとするのだが、今日もまた目は覚めてしまった。

気分は最悪。

そこはかとなくダルい。




土方はいつも、交わる時にオレを見ていない。

どこか上の空だ。

土方は俺の事なんか見ていない。
俺じゃなくても土方は、いいんだ。

俺は土方じゃなきゃ駄目なのに。


…いつか離れることになるんだろうな。

もとから男同士だし。

お前と離れたら俺は壊れてしまうよ…土方。


少し涙が浮かぶ。


まあ…

重い気持ちを振り払うように銀時は頬を叩いた。

まだ離れることはなさそうだし、大丈夫だ。

一緒にいる時間を大切にしなくてはならないな。

愛する人を離さないようにしなくては…。






ベッドに戻ると土方は起きた様で、煙草をふかしていた。

銀時は土方の髪を指で撫でて名残惜しげに言った。


「行かないでね…。土方。」

土方は勘違いをして
「お、おめえの下手くそなテクニックでイけるか!阿呆ッッ!」なんて強がっている。


銀時は悲しげに目を伏せた。

きっと自分の想いが伝わるのは遠い話。

この鈍感はなおさらだ。



その間に離れて行きませんように。

そう想いをこめて優しく銀時は土方を抱き寄せた。




――弱く抱きしめたら離れてしまう

強く抱きしめたら壊れてしまう

貴方はまるで硝子のようで


end
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