短い小説

□二人の悪魔
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「わかんねーヨ。」
「俺もでさァ。」

はぁ。何度目の溜息だろう。
甘くなるはずの時間がこうなってしまったのは、この二人のせいだ。
俺と銀八は目を合わせてから苦笑いを浮かべ、二人の悪魔を眺めた。





国語準備室で土方は銀八を待っていた。
恋人同士だが、教師と生徒のだから、放課後しか会えない。
しかし、だからこそ、幸せも大きくなる。
土方はこの時間が好きだった。

今日は部活が休みだから、長く二人でいれる。
いつもは話してるだけだが、良ければその先も………なんて考えていたのである。

先日まで、野球部強化月間(では無いと思うが)なのか、毎日キツイ練習があった。

合間を縫ってやって来る土方を大変だと思ったのか、銀八は部活終了後に会おうと持ち掛けた。
しかしうまくいくはずがなく、結局会わない事になった。


その期間が終わったため、今日はいつまでも一緒に居れるのだ。
ようやく待ち侘びた日が来て、土方は胸を弾ませていた。




唐突に、取り付けられている古いドアが音をたてた。

来た――――?


甘いマスクのサド王子と朱の髪を揺らしたチャイナガールが入ってくる。

その後から「土方っ」と入ってきたのは銀八。


銀八が来るのは勿論予定通り(待っていたのだから)。
でもなんでこいつらが………?



ドアを開いたのは土方が思っていた人でなく、二人の悪魔だったのだ。








「オイオイ、土方さんも一緒ですかィ。嫌だなァ〜死んでくれよ〜」

「てめェ…何抜かしてんだ…」

「マヨが居てほっとしたネ。銀ちゃん頼りないアル。ほら、さっさと教えるがヨロシ」

「教わる姿勢が為ってねェっつーの」

「俺が蔑まれてるのはスルーですか、コノヤロー!!!」

久しぶり(授業で会うけど)の銀八はやっぱりかっこよくて、心臓がぎゅうと縮んだ。

うねっている銀髪とか、意外に広い肩幅とか。

ヤバい、動悸が止まんねェ。

「で、どこがわかんねーの?」

ああ、そういえばこの二人は質問の様だった。

さっさと終わる単元ですようにと、どっかの神に願ってみる。

「神楽は?」

「全部アル」

「………サド王子君は?」

「全部でさァ」

皆さん、神は眠っています。

はあ、と大きく溜息をついた銀八の事は好きだけど、なんつー奴らを連れて来たんだと呪いたくなった。
足を踏んだのはわざとじゃないぜ。

「じゃ、やるか……」

先程より猫背になったせいで地面に擦れている白衣を引きずって、銀八は黒板の前に立った。
チョークを片手に「一回で覚えろよ!!!!」と怒鳴った銀八はやっぱりかっこいい。







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