短い小説
□林間学校
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林間学校とは自然とテンションが上がる物である。無論、意味は無い盛り上がりだ。ただ疲れるだけだと分かりながらも、無意味にはしゃいでしまう。
その根幹に当たる所は、大概「泊まり」という事であろう。
級友と夜遅くまで一緒に居、夜も共にする。(変な意味は無く)
そもそも本能か、人は夜になると発奮状態に陥りやすい。
だからこそ、その高揚感に煽られ普段は絶対しないような事をしてしまうのだ。
特に中学二年生、というと一番意味の無い事をしたがる…中二病真っ盛りな時期。
その男子達というと、また性欲がそれに加わり、洒落に為らない始末。
土方の部屋も例外では無かった。
「大きさを競おう」
何の、というのは無神経な問いだ。今までの会話に出て来た所々の単語(童貞、AV、プレイ etc…)を思い出し、察して欲しい。
変な盛り上がり方である。
いつもはしないような事を皆でする。
馬鹿らしいとは思ったが乗らないのも何なので、土方は会話の輪に加わった。
皆やる気満々だ。
土方はそんなもの生まれつきの物なのだから較べたって意味が無い、というツッコミを飲み込んだ。意味は無くても騒ぐのが学生だ、と自分に嘘をつく。
「じゃ、輪になろうぜ。」
まずはリーダー格の男のを計るために隣の奴が準備を始める。
隣の総悟が嫌に殺気を纏わせた声でひっそりと話す。
「なんでわざわざ隣の奴にやらせるんでィ。自分でやればいいじゃねィか。」
他人に触られるのを嫌がる総悟にとっては、堪え難い事らしい。
「しかも隣は土方さん。やだなァ。今すぐ死んでくれよ。」
心底嫌そうに、眉間に皺を寄せる。
何か言い返そうと思ったが、総悟が話を続けた。
「土方さんの隣は………坂田ですかィ。いいなァ代わってくれよ土方ァ。」
「なんでだ?」
「ここだけの話、坂田は遊び慣れてるらしいですからねィ。」
「………?」
意味がわからない。
俺の心情を悟ったように総悟が説明する。
「隣のクラスの………高杉。居るでしょう?あいつと坂田の関係、知ってやすかィ?」
「………。」
「まァ、土方さんは噂に疎いからわからないのが前提ですねィ。」
あの二人ね、ともったいつけて総悟は一息つき、続けた。
「セフレ、なんでさァ。」
セフレ………?
セックスフレンドって奴か
土方にとって性交は好いている者とやるのが前提だったので、その真意は計り知れないが、存在は知っている。
ただ男同士でそんな事が為り得るのかが謎だった。
「愛人……」
「まぁそんな感じでさァ。といっても、高杉が自分に惚れちゃった坂田をヤリ友っつー立場にしてやったっていうか……」
「………?」
「高杉は坂田の事なんてこれっぽっちも好きじゃあ無いんでさァ。」
尚更疑問符が土方の頭をいっぱいにした。
好きじゃねェのに?
「じゃあなんで……」
「坂田を選んだか?」
それは、というところで止まった総悟は目を伏せた。
「高杉は――…」
「土方、お前の番だぜ」
話に夢中だったせいか、自分の番が来ている事に気付かなかった。
総悟はお得意のポーカーフェイスを貼付けている。
俺は動揺を隠せなかった。
「っ、あァ…」
くすくす、と坂田が笑う。
「緊張、してんの?」
刹那顔を赤らめてしまえば、言い訳なんて出来ない。
「大丈夫だって、……刺激が強すぎたらワリィな」
坂田はまたくすくすと笑った。