短い小説
□橋が渡れない
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「やァ…、は、あンッ」
先生、
俺を見てよ。
「土方、イイ?」
そこじゃなくて。
「土方のココ、可愛い」
そこじゃなくて。
………俺を、見てよ。
そう考えてたって、先生の愛撫からの快感を拾っている敏感な身体が、惨めだった。
快感に順応な身体が、許せなかった。
さっきから先生は俺の前を弄びながら、腰を打ち付けて来る。
正直、もともとセックスは好きじゃないから嫌だし、すごく痛かった。でも酷い扱いを受けたって、先生だと思うと感じてしまう…。先生はどうせなんにも思ってないだろうけど。
先生だったら、痛みも甘い疼きに変わる。
それが悔しくて、悲しくて、涙が零れた。
涙を射精間近だから出たと勘違いしたようで、先生はより一層腰を打ち付けてきた。痛くて痛くて、だけど、ヨくて。
あられもない声をあげ、腰を振る自分が許せない。
「ア、ァ、はン…、ンッ」
「…ハッ、淫乱な子」
淫乱………。
その言葉は心にぐさりと突き刺さって、痛みを増やす。
腰を振る自分もどうかと思うけど…。
こんな身体に先生がしたんだ。
………俺は先生に染められていく。
「はぁッ、ダメ…やァ、や、めてッ!アッ」
必死に願ったって、先生の欲情を煽るばかり。
「…イきたくないの?あ、もしかして先生をずっと感じてたいの?ねぇ、淫逸な土方君。」
「ひゃ!…あ、アンッやだァ、ちがう!はッ…」
先生の一言一言が俺を傷つけていく。
………もう、セックス、したくねぇのに。
「我が儘だなァ、土方君は。…ま、先生も疲れたし、これでイって終わりにしよっか。」
俺の前を擦る、先生の手が速まり、前からも後ろからも俺を追い詰める。
もともと感じやすい俺はすぐ、達した。
「は、ンァ――――」
先生は俺からイチモツをずるりと抜いてから、薄ら笑いを浮かべて俺を見下ろした。
怖い、怖い…。
先生はセックスの時、怖い。
先生の考えてる事がわからねぇよ。
俺はまだ未熟なガキで、先生はもう大人だから。
背伸びしようと思ってたけど、だめだった。
ごめんなさい、先生に応えられねぇよ。
ぽろぽろ、涙が出てきた。
「う、はぁ…う、うゥ…!」
先生と離れるのはやだけど、俺の身体と心が持たねぇんだ…!
ごめんなさい、こんな鬱陶しい奴で。未熟で。我が儘で。
無理矢理付き合ってもらってたのに。
「大丈夫か…?い、痛かった?ごめん、優しくするって言ったのにな…」
そんな土方の心中なんて知らず、銀八は優しい言葉を掛ける。
…違うよ、先生。
先生は悪くねぇ、勝手な俺のせいだ。
今更優しくしなくたっていいよ。もう、なにもしないから。
先生に付き纏わないから。
ただ、最後に願えるなら…
先生、
俺を見て。
俺を見てよ………。
ぼろぼろで苦しんでる俺を。
先生からの傷ばっかりだぜ?先生のせいとは言わねぇが。
先生の事が好きで傍にいたのに…な。
…あ、最後にもう一ついいか?
関係の無い頃に、戻れねぇか?
お互いに何も気にしていなかった時に。
身体の関係を持っていなかった、あの日に…………戻ろうぜ、先生。