BL-禁断-
□…みたいなアルケー
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「どこだ、ここは?」
まるで霧がかかったように真っ白な空間のそこに俺は居た
何もない、辺り一面、白の世界
俺は意味もなく、どこかもわからないままその空間を歩いていた
その時、ふと声が聞こえた
「今日は俺の誕生日なんだ!祝ってくれるよね、跡部くん!」
声がした方に振り向いてみれば、そこにはヘラヘラした緩い笑顔で俺様に笑いかけてくるオレンジ頭が居た
「誰だ?」
その問い掛けの答えが返ってくる前に、辺り真っ白な景色がいきなり町の景色に変わった
空からはパラパラと冷たい雪が舞っており、目の前にはキラキラと光る大きなクリスマスツリー
そしてその前には、さっきのオレンジ頭
「明日のクリスマス一緒に祝おうっか、跡部くん!」
だから、誰なんだよテメェは
記憶を辿るが、誰かはわからない、だけどなぜか懐かしい感じだ
そのオレンジが誰かわからないままクルクルと回って変わる周りの景色
景色からして今度はバレンタインだろう
「はい、チョコレート。ホワイトデーに3倍返し期待してるよー!」
「はぁ?」
再びヘラヘラとした笑顔で現れたそのオレンジ頭は、チョコレートを渡しながらそんな台詞を吐いた
ホワイトデー?3倍返し?さっきから、クリスマスだの誕生日だの、何ふざけたほざいてるんだコイツは
誰かわからなく、俺は段々とイライラして来た
「何ふざけた事ほざいてるんだ、アーン?馴れ馴れしく俺様の名前を呼びやがって…そもそもテメェは誰だ」
もう一度問い掛けたその瞬間、ソイツがヘラヘラした笑顔から悲しそうな顔になると同時に辺りの景色が、最初の真っ白な空間に戻った
「そっかー…、跡部くん、俺の事忘れちゃったんだね」
「アーン?」
忘れたも何もテメェの事なんか知らない…
知らない…?いや、知らないはずはない
この感じ…何処かで逢っているはずだ
必死のその曖昧なフォーカスを絞る
そして記憶の中で思い浮かんだ人物
「…っ!!」
思い出した。なんで、なんで、俺はこんな大事な事を忘れていたんだ
だが、今更思い出しても遅いと言っているかのように、ソイツの姿が徐々に消えていく…
「待て!!」
必死にソイツの元へと走るが、その追い掛ける足が重い
消えていくソイツに、伸ばした指先が泳いだ―…
「千石っ!!」
思わずソイツの名前を叫んだ瞬間に、俺はその悪夢から現実へと戻って来た
見慣れた天井と、見慣れた部屋
そして自分の頬には一筋の渇いた涙
泣いていた?この俺様が?
「…ハッ、夢で泣くとかガキかよ、俺は」
一人呟きながら自嘲気味に笑う
窓から朝日が差し込む中、俺はボーッとしながら、ふとカレンダーを見た
今日は日曜日か…
何か、あった気がするな
今日が何の日かベッドの上で天井を眺めながら考えていると、勢いよく部屋の扉が開いた
「おっはよー跡部くん!今日のデートが楽しみで俺から早く迎えに来ちゃったよ!」
いきなり部屋に入って来たソイツは、さっき夢の中で触れる事すら出来なかった俺様の恋人だった
俺は思わずベッドから飛び出し、ソイツを、千石を抱きしめた
「へ?ちょ、いきなりどうしたの、跡部くん//」
いきなり抱きしめられて驚いたように少し頬を赤く染める千石を見つめ、夢のように消えない事を確認すると、俺の中で渦巻いてたモヤモヤが綺麗になくなった
「なんでもねぇよ。もう少しこのままでいろ」
もう、夢の中だろうがお前を忘れたり、逃がしたりはしねぇよ
《…みたいなアルケー》
(それにしても、跡部くんがまだ寝てるとは思わなかったよ。今日が楽しみで寝れなかったとか?(笑))
(バーカ、んなわけねぇだろ)
End
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