本編
□プロローグ
1ページ/2ページ
風の音だけが響いていた
水面には綺麗な満月が映し出されていた
風の音だけが響いていた
幼い少女はそこに1人で立っていた
風の音だけが響いていた
ずいぶんと長い時間、少女は立っていた
風の音に混じって、かすかに足音が聞こえてきた
「キミが・・・”ピエトゥレ・プレツィオーゼ”ちゃんだね」
「だれ?」
少女のまえに、1人の老人が現れた
「私は”ティモッテオ”というんだ」
「ティモッテオ・・・」
少女は澄んだエメラルド色の瞳で、まっすぐ老人を見据えていた
「ウチに来ないかい?・・・私の娘として・・・」
この世で1番、月が輝く夜
少女の物語は幕を開けた――
プロローグ end