Lie and Love
□19
1ページ/4ページ
俺を覚えているか。
そんな言葉が、風に運ばれ私の耳まで届いたのだった。
何のことですか、と困惑してしまった私はさぞ酷い顔をしていたに違いない。
すると、彼は酷く悲しげな表情を見せたのだった。
言葉が出てこなかった。
Lie and Love_姿無き感情の示し方
「どうして、」
「?」
「何故貴方はそんな顔をするの?
私の所為なのですか?
富も名誉もある貴方を貶めるのは、邪魔なのは、私なのですか!?」
違う、とやや退きながらもジョット様は私に言った。
気まずそうなその顔の原因は多分、漸く―否改めて、自分は私を貶めていたのだと悟ったからだろう。
キス、抱擁―それらの行為には一体どんな気持ちが込められているのだろうか。
想像しただけでも恐ろしくもおぞましくもある。
ただの、欲求処理として扱われていくのかもしれない―だなんて頭の片隅でもそんなこと思いたくない。
.