Lie and Love

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俺を覚えているか。

そんな言葉が、風に運ばれ私の耳まで届いたのだった。
何のことですか、と困惑してしまった私はさぞ酷い顔をしていたに違いない。

すると、彼は酷く悲しげな表情を見せたのだった。

言葉が出てこなかった。




Lie and Love_姿無き感情の示し方




「どうして、」
「?」
「何故貴方はそんな顔をするの?
 私の所為なのですか?
 富も名誉もある貴方を貶めるのは、邪魔なのは、私なのですか!?」


違う、とやや退きながらもジョット様は私に言った。
気まずそうなその顔の原因は多分、漸く―否改めて、自分は私を貶めていたのだと悟ったからだろう。

キス、抱擁―それらの行為には一体どんな気持ちが込められているのだろうか。
想像しただけでも恐ろしくもおぞましくもある。

ただの、欲求処理として扱われていくのかもしれない―だなんて頭の片隅でもそんなこと思いたくない。


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