Eternal night

第20夜
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つまり、この人は今私を元の場所に戻そうとしているのだ。
引かれる腕をありったけの力で引き、彼の手が離れると同時に走って逃げ出した。
背後ではそれを制止する声が聞こえたけれど、私は無視して逃げる。

ただ心に引っかかるのは、風が心配しているという彼の言葉。
痛む足をその言葉一つで何度も止められそうになったけれど、――怖かった。
今帰っても、また貴方を悩ませてしまうかもしれない…。


「おい!待てって言ってるだろ!!」
「っ!」


精一杯走って男の人との距離を広げたはずなのに、イキナリ近くで怒鳴る声が聞こえ私は逃げる事を制止去れる様に腕を引かれた。
一瞬固まったけれど、また振り払おうと意を決したが、男の人の力にはどうしても勝てなかった。


「……帰りたくない」
「…は?」
「戻っても…風と、私…離れ離れ、なる」


自分でも気付かなかった、体の内側から何かが溢れかえっているなんて。
ましてやそれが、今の現状を作ってしまった私の中に存在している“闇”だかんて、男の人も私も気付かなかった。

少しだけ、「帰りたい」「風に逢いたい」と心の隅で思っていたのかもしれない。
でももう、帰りたくないとはっきり自分の意思を持てた…だから、


「…!!」


夜空よりもさらに黒い物が、私の中から炎のように上がった。



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