book11-2

□我が家流の愛し方
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朝起きて一番に見渡す部屋の中。
予想していたけど片方のベッドには綺麗にたたまれたパジャマ。

(今日はー…早いんだっけ)

思考のまとまらない頭を起こそう起こそうと思うも眠気に負けてベッドへと逆戻り。
視界の先には天井だ。
横目に時計を見ればもうすぐ昼に差し掛かろうとしてる。
授業は午後。
まだ少しだけ余裕がある。

(…起きなきゃだよなー…)

再び体を起こしてベッドから降りてキッチンへと向かった。
何か昨日の余りでも食べれば平気だろうと思ったらテーブルの上にきちんと用意された食事。
ご丁寧にラップが、かけてあった。
その横には紙が一枚。
『おはようございます。先輩の事だから適当に食べそうなんで作っておきました。』と。
それを見て嬉しさと恥ずかしさが込み上げてきたと同時に、朝早くから作ってくれてたのを想像して苦笑した。
ふと、その文章の下に小さく
『因みに今日はお昼位に帰ります』
昼、昼ねぇ。
そしたら出掛けないとな。
もしかしたらすれ違いになっちまうかも。

(……顔、見たいな)

夕方になれば会えるのなんか分かってるのに今、会いたい。
出掛ける前に会いたくて、どうだろう?と考える前に身体を動かす事にした。
さっさとご飯を胃の中に放り込んで、食器を水につけてる間に着替えるべく部屋へと向かってクローゼットから適当な服を繕って着替えた。
再びキッチンに戻って食器を洗い終わったら身なりを整えて色々と準備をする。
ふと、歯磨きをしながら鏡を見て恥ずかしくなった。

(うわっ俺、絶対変な顔してるっ)

何しろ、会いたいと思っただけでこんなにも嬉しくて嬉しくて仕方がない。
別々に住んでいる訳じゃないのに、いまは一緒なのにな。
少しでも傍にいたいと思うのは正直、恥ずかしいけど寂しくなったり、嬉しくなったり、その度に好きなんだって愛されてるんだなって実感する。
それに…朝起きたら一番に顔を見たいから。

(気遣いよりも…その方が嬉しいな)

そんな事、本人には言えないけど。
さて、早く出てしまおう。
帰ってきてからじゃ元も子もないから。
玄関に急いで向かった、勿論、忘れ物がないか確認してから部屋を出て鍵をかけて、駅の方に向かって歩き出す。
正午を少し過ぎたくらい。
そのまま歩いて駅まで歩いて、目的の人物を探す、そろそろ来ててもおかしくはない時間帯。
ふと、見回した先に見覚えのある頭を見つけた。
その瞬間、ふつふつと胸の所が温かくなってくのが分かる恥ずかしいような嬉しいような暖かい感じ。

「京介っ!!」
「!!先輩…?」

ビックリしたように振り返り俺を確認した途端に柔らかい表情で笑った。
近付いてきて、どうしたんですか?何て聞くもんだから言おうとした瞬間、理由を考えて一気に顔の温度が上がった。

「べ、べつに少し時間があったからっ来てやったんだからな!!」
「…そうですか。俺は少しでも先輩に会えて嬉しいですけど」
「っ〜!!!なんでっそう簡単にっ!俺だって、少しでも、会えないかなー…って」

あぁ絶対変な顔してる。
だって顔の温度ヤバイもん。
ふと黙ったまんまの相手に目をやると真っ赤な顔で少しだけにやついてる?

「なんだよ!!その顔はぁぁ!!」
「ぁーいや、愛されてるなーって思いましっ!」

言われた瞬間、腹に拳を入れたのは言うまでもない。
蹲る京介を余所に踵を返して真っ赤になった頬を冷ますように掌で覆ってみても収まる気配はなくて焦って温度が上がる。
その間にフラフラになりながら立ち上がった京介を尻目にずんずんと先に進んでいくと意気なり後ろから抱き締められて耳元で

“行ってらっしゃい”

優しくて柔らかな声音で囁く様に言われたら行けなくなるだろう!
勿論、その考えを抑え込み少しだけ京介の方を向いて小さく

“行ってきます”

と、それだけ残して離れた。
きっと後では苦笑をした顔の京介が小さく手を振って送り出しているだろう。
恥ずかしいから振り返ってやらないけどな!






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君と366日』企画様に参加させて頂きました。
京倉です!
御題に合ってるのか微妙な所ではありますが…。
ツンツンしてる倉間とそれを微笑ましく見守ってる京介って感じですかね?

素敵企画に参加させて頂き
有難うございました!!






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