book11-2

□熱ともる指先
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ガタンガタンと揺られながら外を見た。

少しだけ早く出てきたせいか車窓から見えたのは
綺麗な太陽と少し開けた窓から入ってくる気持ち良いほどの風だ。
暫くすれば風景が変わってきて一面に広がる青。

隣にはこの事を企画した本人なのに…
朝早かったからか、自分の肩に寄り掛かりながら寝息を立てている。
勿論自分も眠たくない訳じゃないけれど…
寝たくないと言うか寝れなかったりする。
それは繋がった手のせい。
指を絡めて、これじゃまるで恋人同士…
間違ってはいないけど…
こんな公の前でこんな風に手をつなぐのは初めてだから
恥ずかしくて仕方ない
その為、意識がそっちにいって仕方がない。
きっと変な顔をしてるんだろうな。
そう考えながら彼を見て笑みが零れた。

「ん、…」
「あ、起きましたか?」

未だに眠そうな目を擦って、ぽやぽやした表情で周りを見渡して
俺の方を向いて笑みを浮かべ小さく名前を呼んで
頬にキスをされた…。
それが恥ずかしくて思わず彼の顔を掌で覆った。
掌からは不満そうな声が聞こえたけど、
今は恥ずかしくて恥ずかしくて、どうにかなってしまいそう。

暫くして、車内アナウンスが響き渡って目的地の名を告げる。
それを聞いたとたんに今まで以上に目を輝かせて席を立った彼の後を
荷物を忘れないように手にしてからついていった。
扉が開くのと同時に風にのって車内に入ってきた潮の香り。

それだけで、自分自身の中で沸き上がるなにか。
何かなのかは多分わかっている。

「よし!行くぞ勇気!」
「はい!」


ホームに降りて改札へと浮かれるような足取りで進んでいく。
不意に、また指を絡ませるように繋がれて体温が上がっていくのが伝わった…。
けど、不思議と安心できて。
少しだけ顔が緩んで幸せでいっぱいになった。


あの青い世界までずっと繋いだまま




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TMS.』様にて参加させて頂きました。
久しぶりの綱立で文おかしいな(笑)
前に書いた『愛の逃避行みたいで愉快』に少しだけ関連付けて書かせて頂きました。
では。参加させて頂き有難う御座いました。






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