book11-2

□儚い身体
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それはそれは
儚く、消えてしまいそうな身体。




今、腕の中に収まっている者を見てため息をついた。
どうして、こうなったのかわからないんだ。
すやすやと眠る、こいつが悪い訳じゃない
ただ…自分の“理性”ってやつに勝てる気がしない。
腕の中で気持ち良さそうに、幸せそうな表情で寝息をたてている恋人を何もしないで
見守ってはいるけど…いつ切れてもおかしくない。

(いつもだったら…ないのにな)

なにしろ、自分よりも一回り位だろうか?
小さな身体に幼い顔つき
明らかに周りから見たら俺は犯罪者扱いになるだろう。
こいつがどうやって現れたかは知らない。
昨日から居たのだ。
亡くなった、消えた…そう思ってたのに。

はじめは不思議だった。
俺が初めて会った年齢も身体もそのままで
自分の前に現れた。
正直なところ、霊的なあれかと思ったけど
来るなら十年前に来いって話だ。
けど、触れられるし食事はするし
…普通に生活しているんだ。
ただ…俺しか見れないらしい。多分。

「お前は、いったい何しに来たんだよ?」

返答は期待しない。
答えなんか要らない。
また会えて傍ににいれればそれでいい。
明日、此処に存在して欲しいと願いながら
明日を迎える。今日を生きる。

少しだけ歪んだ思考を頭の隅に置きながら
桃色の髪を撫でた。




すぐにでも消えてしまいそうな身体。
出来ることなら、これから先も
傍にいて。











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